すみれブログ
商売道具
2025年07月7日

昭和の時代、難しい弁理士試験になんとか合格して弁理士事務所を始めるにあたり、必要な商売道具といえば、紙とペンと電話機だった。

 

それが、平成を経て令和の時代、これらは寧ろ不要とさえいえる。その代わり必需品となったのはパソコンだ。いまの時代、これがなければというか、これを扱えなければ弁理士として商売が成り立たない。逆にこれさえあれば、取り敢えず弁理士業務のほぼすべてができるといって過言でない。

 

特許庁に提出する書類作りはもちろん、調査、手続き、メールによる顧客との連絡、zoomによる面談・打ち合わせ、確定申告、銀行の入出金など、ほぼすべての業務がパソコン1台で完結する。

 

僕がこの特許業界に入った平成元年は、特許庁に対する特許出願などの手続きはすべて紙での申請だった(郵送)。それが、(僕の記憶違いでなければ)、平成2年に電話回線を利用した電子出願が始まり、紙以外での手続きが可能となった。

 

といっても当時の電子出願システムを構成する機器、つまりパソコンとモデムとスキャナーとプリンタと電子出願ソフトといった簡単なシステムであったが、なんと当時の導入費用は500万円を越えるとても高額な代物であった。

 

当然、個人事務所では無理で、ある程度の規模の事務所でなければ導入できない。個人や零細事務所は従来とおり紙での出願か、電子データをフロッピーディスクに記録してそれを郵送するという方法だった。ちなみに当時僕が勤めていた事務所は約30人規模の中堅事務所だったけど早々に導入していた。

 

で、なんでこんな話をしたかというと、最近商売道具を新しくしたのだ。といってもパソコン本体でなく、パソコンでつかうマウス。考えてみれば、日常生活で最も手に触れているものといえばこのマウスだ。おそらく平日で8時間、休日でも2~3時間は触れているのではないかと思う。ちなみに僕は近眼と老眼の爺さんなのでスマホは苦手だ。

 

ところが、このマウス、最近かなり傷んできており買い換えを検討していた。調べてみると2015年発売だから約10年使っていることになる。機能自体は問題ないが、さすがに手に触れる部分の塗装が剥げているのはもちろん、手のひらに触れるラバーの部分もボロボロになってしまっている(しかし、考えてみればこのマウスではだいぶ稼がせてもらったなぁ)。

 

というわけで、同じエレコム製の最新のものに買い換えるつもりだったが、いろいろ物色しているうちに、どうやらドラックボール式のマウスというのがあってとても使いやすそうだ。

 

普通のマウスとの違いは、普通のものはカーソルを動かすためにはマウス自体を手で動かす必要があるが、ドラックボール式のものは、マウス自体を動かす必要はない。その代わり、マウスについているトラックボールという球体を親指で前後左右にくるくると回すだけでカーソルが自由に動く仕組みだ。

 

それでいろいろ迷ったあげく買ったのは、以下のロジクール製のものだ。これは僕がチャンネル登録しているYouTuberやひろゆき氏が絶賛していたものだ。案件かもしれないが物は試しと思って買ったのだが結構高額だ。Amazonで19,800円。もちろんマウスでこんな高額なのを買ったのは初めてだ。

 

右が今までつかっていたマウス、左が新しく買ったマウス

 

初めて触れたときの感想は、底部が金属製でずっしりと重く、高級感漂う別物という感じ。ただやや大きいため、手の小さい女性には扱いにくいかもしれない。まだ、操作に慣れていないがこれからはこれでたくさん稼がせてもらう、

 

 

……といいなぁ(汗)。

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賠償金の算出方法
2025年05月29日

つい先日(5月27日)、知財高裁において、東レのかゆみ改善薬に関する特許権の侵害裁判において知財高裁は被告に対し217億円の損害賠償金の支払いを命じました。217億円という賠償金は日本の特許裁判史上、最高額です。

 

これまでの日本の特許裁判における賠償額としては、潰瘍薬(シメチジン)に係る特許権を侵害したとする訴訟での約30億円や、パチスロメーカーのアルゼとサミーのパチスロ裁判における約84億円といった事例がありますが、今回はこれを大きく越える衝撃的な額です。

 

といっても海外では1,000億円を越えるような事例もありますのでそれに比べると少ない方ですが、業界には衝撃が走ったことでしょう。

 

この判決に対して被告である沢井製薬と扶桑薬品は上告して争う姿勢を見せていますが、最高裁で判決が覆る例は極めて少ないため、これで確定する可能性がかなり高いと思います。

 

さて、こういった特許権侵害の賠償額ですが、具体的にはどのようにして決められるのでしょうか。

 

この賠償額は原告及び被告の言い分を充分にきいた上で裁判所が自由に決めるのですが、といっても無制限に決めることができません。

 

例えば原告が被告に対して100万円弁償しろ、といっているのに裁判所が勝手に損害額は200万円だから200万円支払え、といった判決はできません。もし、そんな判決をしたら原告、被告共に「は?」となってしまい、裁判所の信頼性を損ねてしまいます。

 

これは民事訴訟法の原則である処分権主義に基づくもので、裁判所は当事者が争っていないことまで考慮してその額を決めることはできないのです。

 

ですので、裁判所が決められる賠償額は被告が請求する額が上限となり、それを越えることはできません。上の例でいえば、裁判所は賠償額は200万円と考えていたとしても、原告が100万円払えと主張しているので100万円を越える判決はできないのです。

 

かつて青色LEDでノーベル賞を受賞した中村修二氏が勤務先の日亜化学を訴えた裁判では、裁判所は賠償額は600億円が相当と判断していたのですが、中村氏側は200億円しか請求していなかったため、200億円の判決をせざるを得なかったというエピソードが有名です。

 

そのため、原告としては可能な限り高額な賠償金を請求するのが望ましいのですが、賠償額が高額になると最初の持ち出し(印紙代や弁護士費用)も高額になりますので、その案配はなかなか難しいところです。

 

次に、裁判所は原告が請求してきた賠償額が正当かどうかを判断します。この判断は原告及び被告の出してきた証拠や資料に基づいて行われます。

 

これは同じく民事訴訟法の原則である弁論主義といって裁判所は当事者が出してきた資料のみに基づいて審理を進めるのであって、裁判所が独自にあるいは第三者機関などを使って勝手に証拠調べをして判断する訳ではないのです。公的機関である裁判所はそんなに暇でも親切でもないのです。

 

この賠償額を決める根拠となる考え方は、いわゆる逸失利益です。つまり、被告の侵害行為がなければ原告が得られたであろう利益をそのまま賠償額としようとする考え方です。特許権侵害は不法行為の一種ですからその賠償は民法709条が適用されます。

 

しかし、709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とだけ規定しており、損害額の具体的な算出方法は規定していません。

 

そこで、特許法には、この709条の特例として具体的な損害額の算出方法がいくつか規定されています。

 

先ず1つ目の算出方法は、被告が販売した製品の数に、原告製品の1個あたりの利益額を乗じた額を損害額とするものです。

 

例えば、被告が特許の模倣品を1万個販売したとします。そして、原告が特許製品を1個売った場合の儲けが100円だったとすると、販売した1万個に1個あたりの儲け分の100円を掛け合わせた合計100万円が原告が儲け損なった額と考えることができるので、この100万円を賠償額として認めるものです。

 

ただし、原告は小さな工場であって自力では1万個も作って売れるような規模でない場合は、製造能力の最大限までしか認められないため、賠償額も少なくなりますが、製造能力を越えた部分については特許の実施料相当額(ライセンス料)として賠償額に加算することができます。

 

2つ目の算出方法は、被告が模倣品を販売することで被告が儲けた額をそのまま損害額として認めるものです。原告は、自分が儲け損なった額の証明よりも、被告が儲けた額を証明するほうが簡単なときは、その額を損害額として請求することができるのです。

 

3つめの算出方法は、仮に原告である特許権者が、被告に対してその特許の使用を認めた場合の特許使用料(ライセンス料)をそのまま賠償額として認めるものです。

 

原告である特許権者がまだその特許製品を製造販売していなければ、逸失利益が発生していないので上記の2つの算出方法は使えないのです。といっても被告は無断で特許発明を使用しているわけですから、特許権者には本来受け取れるはずの実施料相当額の損失は発生していると考えられるため、その使用料が損害額として認められるのです。

 

ただし、実施料相当額といっても正当な契約に基づく通常の実施料と同じではおかしいので、実質的には相場を大幅に上まわり、逸失利益に近い額になることでしょう。

 

特許の裁判ではこういった決まりに従って実際の賠償額が決まるのですが、この損害額を巡る争いは、実質的に裁判に負けたことが前提となるため、被告やその代理人側としては精神的にかなり辛い作業になるでしょう。

 

医薬品はその開発に莫大が費用が係りますので、新薬メーカーはそれを特許で護ることでその開発費用を回収し、回収した費用で次の医薬品を開発していくといったビジネスモデルで成り立っています。

 

ですので、医薬品を巡る特許裁判では今回のような莫大な賠償額がでることは決して不思議ではありません。むしろ今後は医薬品業界だけでなく他の分野でも続々と高額賠償判決が出ることが予想されます。

 

ちなみにこのニュースのような特許裁判を見ると勝った方の東レが正義で負けた方の沢井製薬側が悪のような印象を受けますが、沢井製薬のような後発医薬品メーカーがあるからこそ我々国民は良い薬を安く手に入れることができるということは付言しておく必要があります。

 

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特許の値段
2024年02月7日

特許権は知的財産権と言われるように財産権の1つですから、それを他人に譲渡して換金することができます。

 

では、その値段(譲渡金額)は平均でいくらくらいでしょうか。特許庁が公表した2023年のデータによると……、といいたいところですが、残念ながら特許庁はそのようなデータは公表しておりません。

 

でも、特許権の譲渡は登録人の名義変更という手続きによって比較的頻繁に行われていることから、無償というのは考え難く有償が殆どだろうと推測されます。弊所でも年に1,2件程度、特許権の移転手続きを行っていますが、相続を除き有償のケースが殆どです。

 

で、その譲渡金額ですが、特許権の適正な価値、価格を決定するのはとても難しいです。巷には様々な価値評価手法があるようですが、それで算出された価格が適正なのかどうか議論が分かれるところです。

 

というのも土地や建物のような不動産や中古車などであれば周辺地域や車種ごとの相場という基準がありますが、特許権にはそのような相場というものがないのです。

 

しかも、特許権は発明という技術的思想であって実体がない上にいつかは消えて無くなってしまう実に儚い権利です。その命は最大でも出願から20年、医薬品のような特殊なものでも25年です。土地のような不動産であれば日本が沈没しない限り未来永劫残りますが特許権はそうではありません。

 

加えて、その権利の内容である発明の内容も既に製品化されてその業界では他社の追随を許さないような強力なものから、現在又は将来に亘ってまったく実施される可能性がない殆ど無価値のものまでまさに玉石混交です。

 

これはある意味骨董品に似ており、値段が付けられない国宝級のものから殆どガラクタ同然のものまであるから一概にはいえない、と当職もクライアントから質問されたときにお茶を濁すような回答をしています。何億円積んでも譲って貰えないものがある一方、ただ同然でも引き取ってもらえないものまでその価値は実に様々です。

 

とはいっても、それでは回答にならないのでとりあえず譲渡価格の1つの指標として、その特許を取得して現在までかかった総費用を算出し、その費用を基準として考慮しては如何でしょうかというアドバイスをしています。

 

特許は取得する段階だけでなく、取得後も特許料という名目の固定資産税が毎年係りますので、例えば特許取得までに係った費用が70万円、その後に支払った特許料が30万円であったとすると、合計100万円を基準とし、これにそのときの状況に応じて+αまたは-αすればよいのです。

 

これは特許権だけでなく商標権や意匠権、著作権も同じですので実体のない知的財産権の譲渡金額を決めるための指標としては当事者が最も納得しやすいとても便利なものです。

 

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取り敢えず出願しておくことが大事!
2023年11月29日

自営業者やこれから起業しようとする人たちは独自のアイデアが他人に真似されないように予めプロテクトしておくことが重要です。

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商標話し(5)キャッチフレーズの商標登録
2023年03月28日

いいキャッチフレーズを思いついたのでこれを商標登録して我が社で独占したいというご相談を受けることがあります。

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