自営業者やこれから起業しようとする人たちは独自のアイデアが他人に真似されないように予めプロテクトしておくことが重要です。
そのアイデアが技術的なものであれば特許権、デザイン的な商品の外観であれば意匠権、キャッチーなネーミングやロゴであれば商標権、文化的な作品であれば著作権で保護することが可能です。
ここで著作権を除き、特許権や意匠権、商標権による保護を求める場合はそれぞれ国に対して所定の手続きが必要です。これらの知的財産権の付与に関する官庁は経産省の外郭団体である特許庁ですので特許庁に対して所定の書式に従って出願手続きをする必要があります。
この出願手続きは本人が行うのが原則ですが、法律の知識がないとかなり難しいので通常は専門家である弁理士や弁護士に依頼するのが殆どです。そのため相応の費用が必要となってきます。
また、出願後には審査がありますので当然のことながらこの審査の段階で拒絶されて権利が取得できないこともあります。さらに権利を取得できたとしてもそれ行為自体には費用が係るだけで一切お金を生みません。
そのため、資金に余裕がない自営業者や起業家は、躊躇して出願手続きを先延ばしにしたり、取りやめてしまい、後で後悔するケースが多く見られます。
そのため、事業を行う上で必要なアイデアは多少無理をしてでも特許出願や意匠登録出願のように何らかのプロテクト行為をしておくことが肝要です。
ここで、特許出願や意匠登録出願のようにお金をかけて手続きしても審査にパスしなければ無駄になるんじゃないかと考える人もいますがそうではありません。
誤解をおそれずにいうと審査にパスするか否かはどうでもいいのです。それよりも出願をしている=自分の権利を保護するためのプロテクト行為をしているという事実が大事なのです。
「無断駐車した場合は罰金1万円申し受けます」という看板を街中でときどき見かけますが、これには法律的な根拠も効果もありません。それよりもその看板の文言から無断駐車は絶対に許さないというその土地の所有者の強い意志が感じ取れます。
そのためそれを見た人の多くは面倒なことになりそうだからその場所に駐車するのはやめようと思うでしょう。それによって法律的な根拠も効果もないにもかかわらず、実質的に無断駐車を無くす効果が得られます。
特許出願や意匠登録出願の場合も同じです。出願しただけではまだ何も権利が発生していませんが、出願したという行為は事実ですからそれを堂々とアピールすることができます。
ですので例えばウェブサイトの製品ページやカタログに「特許出願済み」などと記述すれば、それをみた同業者はその商品が売れると思っても後々面倒なことになるのを避けて安易に真似するようなことはないでしょう。
そうなると実際に権利を取得していなくともその時点で実質的に目的(独占)を達成したことになります。
数多くの特許裁判例をみても始めから他人のアイデアを模倣して実施した結果争いになったというケースよりも、そもそもオリジナルのアイデア乃至公知の技術と信じて善意で実施していたところ権利者と名乗る相手から訴訟を起こされ、仕方なく応訴しているというケースが殆どです。
ですのでビジネスに役立ちそうな新しいアイデアが沸いてきたならば取り敢えず出願しておくという行為が重要なのです。