すみれブログ
商標話し(3)チキンラーメン
2022年04月5日

最近、日清食品ホールディングスが販売する即席麺「チキンラーメン」のパッケージの配色が商標登録されたようです(商標登録第6534071号)。

 

ふ~ん、なにそれおいしいの?じゃなくて、それがどうしたの?っていう反応が聞こえてきそうですが、実はこういった種類の商標の登録が認められるのは結構珍しいケースなのです。

 

今回登録が認められた商標がこれです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この商標は文字やマークなどがなく、単に色の組み合わせのみからなる商標です。

 

こういった商標出願は通常「商標として識別力がない」という理由で拒絶される場合が殆どです。この出願もその経過情報をみると同様な理由で最初の拒絶理由通知がなされています(商標法第3条第1項)。

 

「商標として識別力がない」というのは、要するにその指定商品・役務(サービス)との関係で一私人に独占使用させるべきものでない、つまり独占適応性がないと考えるとわかりやすいと思います。

 

例えば指定商品「りんご」について「Apple」という商標を認めるとその商標権者以外の同業者は「りんご」について「Apple」という文字を一切使用することができなくなり、困ってしまいます。

 

ちなみに「りんご」以外の商品や役務、例えばコンピュータや自動車、引っ越しサービス、銀行業について「Apple」の商標を使用していても、既に他人がその商標をしていなければ使ってもだれも困らないのでそのまま登録が認められるでしょう。

 

また、商品の産地名や販売地、商品の品質や原材料などを表示する商標も同様に独占適応性がないとして登録が認められません。例えば「東京」や「北海道」、「フランス」などの地名、「スーパー」や「高級」などの品質を示唆する表示、「プラチナ」や「FRP」などの原材料を示唆する表示などはダメです。

 

今回認められた商標は色の組み合わせのみからなるものでその指定商品は「即席めん」です。通常即席めんのパッケージにはカラフルな色彩が施されていますが、人間が明確に判別できる色の種類は有限ですから、仮に特定の色の組み合わせであっても、それを認めてしまうと、他人が使用できる色の範囲が狭まってしまい、困る人が続出するからです。

 

その一方、こういった「商標として識別力がない」と判断された商標であっても現実の使用により需要者に広く知れ渡って周知になったことによって識別力が発揮されるケースがあり、そのような場合には例外的に登録が認められることがあります(商標法第3条第2項)。例えば「あずきバー」(あずきを加味してなる菓子)、「角瓶」(ウィスキー)、「ジョージア」(コーヒー、ココア)、「Kawasaki」(エンジンオイル)などです。

 

この出願の経過情報をみると、出願人は「識別力がない」という審査官の見解は認めつつそれでもこの商標は例外規定に該当するとして登録すべきとの意見書を提出する対応を採っています。

 

しかし、この例外規定は非常に厳格に運用されていて使用によって周知になったことを示す証拠資料を大量に提出して審査官を納得させなければならず、それはそれは大変な作業です。しかも、実際に使用している態様は以下の写真のように「チキンラーメン」などの文字や調理例の写真、イラストなどとの組み合わせです。使用によって実際に識別力を獲得したのはこのよう商標ですので、出願商標のようにその背景のみの色の組み合わせでだけでこの例外規定が受けられるかどうかは微妙でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日清食品ウェブサイトより引用

 

この商標は2018年7月12日に出願されましたので、登録になるまでに約4年近くの時間を要しています。その間に延長申請を含めた様々な手続きがなされ、しかも幾度か代理人の変更もあったようで難産の末にようやく登録が認められたようです

 

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