すみれブログ
先使用権があるさというけれど…
2014年03月25日

特許は金も時間もかかるし、なにしろ技術を公開しなきゃならないから、うちは特許は考えていない。もし、他人から攻撃されたら先使用権があるから大丈夫さ」という社長さんがおられます。

 

この先使用権とは、特許権者による攻撃に対する抗弁の一種です。

 

例えば、自社が昔から実施している発明と同じ発明についてその後に他人が特許を取った場合、その他人から特許権侵害で訴えられるケースがあります。

 

他人から訴えられた場合には、自社の実施を理由に新規性がないとの理由でその特許を無効にすることも可能ですが、製造方法のように工場内で秘密裏に実施される発明の場合は、新規性欠如を理由として無効とすることが難しいことがあります。

 

このような場合には、その裁判でこの先使用権を主張することで、特許権者からの攻撃を免れるだけでなく、引き続き無償でその発明を実施することが可能です。

 

そのため、冒頭のような考え方は正しいのですが、実際、裁判においてこの先使用権を主張し、これが認められるというのは容易ではありません。

 

いうまでもなく裁判では、言った・言わない、やった・やらないを主張しただけでは真実と認めてくれませんので、その証拠を提出する必要があります。

 

それでは、裁判で先使用権を認めて貰うためには、何を証拠として提出すればよいのでしょうか。

 

これについては、特許庁から出ている「先使用権制度のガイドライン」が参考になります。

 

このガイドラインによれば、①研究ノート、②技術成果報告書、③設計図、仕様書、④事業計画書、⑤見積書、請求書、⑥納品書、帳簿類、⑦作業日誌、⑧カタログ、パンフレット、商品説明書、⑨製品の物自体や工場の映像を証拠として残す手法等が有効であるとされています。

 

また、製品の物自体を証拠として残す場合には、その製品を封筒に入れて封印し、公証役場で私署証書と封筒の境目に確定日付印を押して貰っておく必要があります。

 

万が一、裁判になってもこれらの証拠を直ぐに出すことができれば先使用権が認められる可能性は高くなるのですが、果たしてどの程度の企業がこれらの証拠を出せるのかは甚だ疑問です。

 

何でもかんでも特許出願というのは拙いのですが、ノウハウとして技術を秘匿化することを選択した場合には、その秘密漏洩防止策だけでなく、裁判になったときに先使用権を認めて貰えるように万全の準備が必要です。

 

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