すみれブログ
期待値
2014年02月4日

日本には幾つかの合法的なギャンブルがありますが、これらのギャンブルには「期待値」というものがあります。この「期待値」とは、要するに掛け金に対して戻ってくる見込み(確率)の金額をあらわしたもので、例えば100円を賭けて50円戻ってくれば50%の期待値ということになります。

 

一般的には、「宝くじ、ロト、ナンバーズ」が46%、「競馬、競輪、競艇」が75%、「パチンコ,パチスロ」が97%、といわれています。

 

宝くじやロトなどの期待値が低いのは売り上げの半分が社会事業に使われている(らしい)し、競馬,競輪などではある程度主催者側である地方自治体などの収益を確保するために、この数値になっているらしいのですが、いずれにしても数値を見る限りでは到底勝てる気がしませんね。ちなみに私はどちらもやりません。

 

一方、パチンコ,パチスロの期待値は97%と意外と高い数値になっていますが、これはあくまでも1ゲーム(1抽選)あたりの期待値です。ですので、ゲーム数が多くなるほど限りなくゼロに近くなってしまいます(97%のゲーム数乗)。数万円もって入店したものの数時間後にはスッカラカンになって出てくるのはこれが理由です。くれぐれもやり過ぎには注意しましょう。

 


ところで、このパチンコ機やパチスロ機も他の工業製品と同様にたくさんの特許によって保護されています。一説によれば1台あたり数十から数百の特許権があるとか。もちろん、これらの特許はいろんなパチンコ機メーカーによって取得されているため、新しくパチンコ台を作る場合にはその特許毎に特許権者であるパチンコ機メーカーに対して使用許諾を得る必要があります。

 

しかし、その特許の数が増えるといちいちその手続をするのは面倒です。そこで、メーカー各社はそれぞれの特許を持ち寄り、これを特許管理会社に委託して窓口を一本化してこの特許管理会社を通じて互いに使用許諾を得るという仕組み、いわゆるパテントプールというシステムをつくりました。

 

そうすると、新規事業者がこの業界へ参入する際には、パチンコ機を作るための必要不可欠な特許の使用許諾を得るべく、この特許管理会社に特許使用許諾を申請をすることになります。しかし、新規事業者の参入は既存事業者のパイが奪われることを意味しますから、この特許管理会社は新規参入業者に対して一切特許の使用許諾を認めない、あるいは申請に対して厳しい条件を付ける場合があります。

 

これがいわゆる独占禁止法に抵触するのではないか、という問題があります。

 

つまり、特許権の行使自体は独占禁止法で認められるため、あるパチンコ機メーカーが新規事業者の申請に対して自己の特許の使用を認めるか否かは全くもって自由です。その新規事業者は、その特許を使えないだけで代替の技術でカバーすれば良いからです。

 

しかし、既存のメーカーがパテントプールを使って窓口を一本化してその窓口を通じてのみ使用許諾をするシステムではその窓口となる特許管理会社が管理保有している必須特許の全てを認めない、あるいは不当な条件をつけると、一切パチンコ機を作れないか、あるいは参入してもビジネスとして成り立たなくなってしまい、新規事業者は事実上その業界への参入が不可能になってしまいます。

 

このような事態に対し、公正取引委員会は、パテントプールの仕組み自体は独占禁止法に違反するものではないものの、それを通じた排除行為は独占禁止法に違反するとの勧告をパテントプールを構成する各社に行いました。要するに既存の事業者が特許を盾に束になって新規事業者を追い払うようなことをしてはいけませんということです。

 

そうすると特許法と独占禁止法は、一見相容れない法律のような気がするのですが、そうではありません。

 

特許法は、世の中の役に立つ発明をした者で対して独占権を付与することで創意工夫に対するインセンティブを刺激して産業の発達を図ることを目的とするのに対し、独占禁止法は、いわば「ケンカをやるんだったら正々堂々とやれ、優位な立場を利用したり、束になってやっつけるような卑怯なことをしてはいけない」という小学生でも理解できるような論理に基づく公平な競争を通じて国民経済の健全な発展を図ることを目的としたものです。

 

ですので、特許法と独占禁止法は、いずれも手段が異なるだけでその法目的はほぼ同じものであり、何れの法律も同じような期待値をもって作られたものと理解して良いと思います。

 

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