すみれブログ
山中特許(1)
2013年02月27日

IPDL(特許電子図書館)で「発明者:山中伸弥」で検索すると9件の特許がヒットします。

 

おそらく、このうち以下の特許が昨年ノーベル賞を受賞したiPS細胞に関連するものだと思いますが、特許の実務家から見ればこの特許は「凄い」の一言です。

 

・特許第4183742号(誘導多能性幹細胞の製造方法)
・特許第4411362号(誘導多能性幹細胞の製造方法)
・特許第4411363号(誘導多能性幹細胞からの体細胞の製造方法)

 

何がスゴイのかというと、(一見すると)とにかく特許権の権利範囲がものすごく(メチャクチャ)広そうで到底敵わないと思わせてしまう点です(「広そう」だというのは、私はバイオに関しては門外漢のため)。

 

特許権の権利範囲(技術的範囲)は、この特許請求の範囲の請求項に規定された発明を特定するための文言(語句)によって判断されます。そして、この判断の基本となる概念としてオールエレメントルール(権利一体の原則)というのがあります。

 

つまり、各請求項に規定された発明を特定するための構成を表現する文言通りの発明を他人が実施した場合にはその特許権の侵害となり、その一部でも実施していないか、その一部しか実施していない場合には、原則として権利侵害とならないのです。

 

そして、一般に請求項の記載においては、発明を特定する構成要素(文言)が少なければ少ないほど特許権の権利範囲は広くなります。例えば、犬>白い犬>白い子犬>白い国産の子犬、のように内容を特定する文言が増えるほど範囲が狭まるようなものです。

 

第4183742号特許の請求項1を見てみると、「体細胞から誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、下記の4種の遺伝子:Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2を体細胞に導入する工程を含む方法。」となっており、発明を特定するための文言にたった2行しか要していません。

 

もちろん、文言の長さと権利範囲の広さは必ずしも反比例する訳ではないのですが、他人がこの第4183742号特許を回避したiPS細胞を作るためには、この「Oct3/4」、「Klf4」、「c-Myc」、「Sox2」といった4つの遺伝子とは全く異なる(均等でない)他の遺伝子を見つけなければなりません。

 

これら一連の山中教授の発明は、発明そのものは言うまでもなく特許も凄い(そう)です。

 

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