すみれブログ
ゆるキャラと著作権
2013年12月12日

先月末に今年のゆるキャラグランプリの投票結果が発表され、グランプリには栃木県佐野市の「さのまる」というキャラクタが選ばれました。

 

主催者の発表によれば2010年の第1回大会では169体、第2回大会(2011年)では349体、第3回大会(2012年)では865体がエントリーし、そして今年の大会ではその倍近くの1580体ものエントリーがあったようで、年を追うごとに盛り上がりをみせているようです。

 

ちなみに我が地元、柏市のゆるキャラである「サカサイ君」と「カシワニ」は、それぞれ243位と259位でした。いずれも全1580体中の300位以内ですのでなかなか頑張ったのではないでしょうか。皆さんの地元のゆるキャラは何位でしたか。


 

いまやゆるキャラといえば、村おこしや地方活性化の切り札ともいえるほど、どの自治体も大変な力の入れようです。たしかに子供達に人気のキャラクタをつくれば、実物を見に行くために多くの人がその地域に足を運ぶ動機付けにもなりますね。

 

ところで、このゆるキャラ、県や市町村等の自治体や民間企業が一般公募したり、デザイン事務所などに依頼して作成して貰うケースが殆どですが、実際の運用を巡ってはその創作者と依頼者との間でいろんなトラブルが発生しているようです。

 

このゆるキャラというのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」といえるため、著作権法上の著作物に該当します。

 

著作権法では、著作物を創作すると同時に著作権が発生し、この権利は創作者に帰属することになっています。そうすると、作成を依頼した自治体や企業側では、それをイベントや商品などに自由に使用するために著作権そのものを譲り受けるという契約を創作者(著作権者)との間で交わすのが通常です。

 

しかし、著作権には複製権や頒布権などといった権利の他に、著作者人格権という権利があり、その1つに同一性保持権という、著作権を譲り受けた方にとっては極めてやっかい(?)な規定があります。

 

つまり、この同一性保持権というのは、著作者の同意を得ずに著作物を勝手に改変してはならない、という規定で、しかもこの権利は譲渡できないため、これを巡って様々なトラブルが起きているのです。

 

この同一性保持権を巡る有名な事件としては、いわゆる「おふくろさん騒動」があります。ある有名な演歌歌手が作詞家から提供を受けた歌詞の一部を無断で改変してテレビやコンサートで歌唱していたため、これに激怒した作詞家がその演歌歌手に対して今後一切同氏の作詞した曲を歌唱することを禁止したというものです。

 

また、スターボ広告事件では多額の賠償金が支払われています。あるカー用品メーカーが自社の製品パッケージのデザインをある広告会社に依頼し、その広告会社はその依頼を受けて外部のデザイナーに25万円でそのデザインを外部委託し、そのデザインがその製品のパッケージに採用されました。

 

ところが、その後そのカー用品メーカーがそのデザインの一部を改変して使用してしまい、これを知ったデザイナー(創作者)が自分の作品を無断で改変して使用していることに腹を立ててそのカー用品メーカーを訴えたという事件です。

 

裁判所は、原告(デザイナー)の主張を認め、約1200万円の賠償金を被告であるカー用品メーカーに命じました。

 

この事件はこれで終わりではありませんでした。デザイナーに訴えられたカー用品メーカーは、そのデザインを発注した広告会社に対して、デザイナーに支払った賠償金や製品パッケージの廃棄費用などを含めた損害の賠償を求めて裁判を起こしたのです。そして、裁判所は被告である広告会社に約3000万円もの賠償を支払う判決を出しました。

 

単なる商品のパッケージデザインと雖も1つ間違えば多額の賠償金を支払うはめになるという怖い事例です。

 

さらに、ゆるキャラに関しても同じようなトラブルが発生しています。ゆるキャラの元祖とも云えるひこにゃんのライセンスを巡るトラブルです。詳細はリンク先をご覧頂ければ分かりますが、いずれの事件も著作権の譲渡を受けた側の著作者人格権に対する知識不足や認識の甘さがトラブルの原因の1つとなっているのは間違いありません。

 

このように著作権は1つ間違えば、とんでもないトラブルを招く可能性がある怖い権利ですので、他人の著作物を利用する場合には、著作権法に詳しい専門家(弁護士や弁理士)に相談するなどの十分な注意が必要です。

 

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