すみれブログ
千葉県の道路が走り難いワケ
2015年07月17日

埼玉県の自宅から柏の事務所までほぼ毎日、車で通勤しているのですが、埼玉県に比べて千葉県の道路はちょっと走り難いなぁという印象があります。

 

水戸街道(6号線)や16号線等の幹線道路はそれほどでもないのですが、ちょっと枠道に入るとくねくね曲がりくねっていたり、道が細くて頻繁に渋滞が発生します。

 

過去の記事にも書いたように埼玉県と千葉県境の江戸川に架かる橋の数も少なくていつもここが交通のボトルネックになっています。

 

はっきりいって千葉県は道路を主体とするインフラが他の県に比べて遅れているのです。

 

どうしてそうなのか、あまりに気にしていなかったのですが、ある調査をしていてその原因らしきものが分かりました。

 

その原因というのが今から27年前に千葉市で起こった事件です。当時の千葉県の収用委員会会長が新左翼テロリストに襲われて全身を骨折するといった重傷を負ってしまい、その後それが原因で自殺してしまったという事件です(千葉県収用委員会会長襲撃事件)。

 

詳細はこちらをご覧頂くとしてその事件後の約16年間、千葉県の収用委員会は全く機能していなかったようです。

 

収用委員会というのは、地方自治法に基づき都道府県に置かれる行政委員会で、その職務は、土地収用法の定めるところにより、土地収用に関する裁決その他の事務を行う組織です。

 

つまりどうゆうことかというと、例えば新しい道路や鉄道を造ろうと計画し、その予定地に他人の土地があった場合、その土地をその所有者から譲ってもらう必要があります。

 

ところが、その地権者がその土地を譲らないといったらその計画は実現できません。個人の財産は憲法で保証されていますので、たとえ相手が国であっても強制的に没収することは許されないのです。

 

でも、その道路や鉄道を造れば人や物の流れがスムーズになり、多くの人が助かります。それにもかかわらず一個人のわがままでそんなことが許されても良いのでしょうか。

 

そこで、日本国憲法第29条第3項の「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」との規定に基づき、昭和26年に土地収用法という法律が制定されたのです。

 

この法律によればたとえ個人の財産(土地)であっても公益事業に必要な土地等であればこれを強制的に収用し、使用することができるのです。もちろん十分な補償をする必要があることはいうまでもありませんが。

 

ここで、重要になってくるのは「公益事業に必要」かどうかという判断です。つまり県が公益という名の下にこの法律を濫用してしまったのでは堪らないからです。

 

そこで、この「公益事業に必要」かどうかという判断をする第三者機関が必要となり、これが収用委員会というものです。

 

通常は民間の学識経験者7人程度で構成されているようで、かの事件の被害にあった会長も民間人(弁護士)でした。

 

話しを戻すと、千葉県ではかの事件の後、収用委員全員が辞任してしまい、その後16年間も不在という異常な状態が続いていたのです。

 

収用委員会が開催されない以上、土地収用法も全く機能しませんので県が必要な土地を取得するためには地権者からの任意譲渡という方法しかなく、それが不可能な場合には全く都市計画が進まないことになります。

 

また、仮に任意の譲り受けに成功したとしても地権者の言い値で買い取らなければならず、その結果、建築費が高騰してしまい、それがサービスの価格となって庶民に跳ね返ってきます。その例として千葉県内の私鉄のなかには運賃がびっくりするほど高いものがあります。

 

千葉県ではようやく平成16年にこの収用委員会が再開されたようですが、やはりその間のインフラの遅れの影響は未だに残っているようです。

 

そういえば、外環道も埼玉県内はたいぶ早くから開通したものの千葉県側ではやっと土地の買収が終えたばかりで全線開通までには未だ当分かかりそうですね。
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