すみれブログ
商標話し(2)これって登録商標?
2021年12月28日

今までなかった新しい商品やサービスがヒットして世の中に広く知れ渡ると、その商品やサービスにつけられた商標が一般名称であると誤解するケースがあります。

 

えっ、これって登録商標なの?というものをいくつか紹介しましょう

 

1.サランラップ

食品用ラップフィルムの商品名として広く知れ渡っている名称ですが、これは日本では旭化成株式会社が所有する登録商標です(商標登録第706999号他)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1940年代後半にアメリカで発明され、日本には1960年に販売が開始されました。発売当初は何に使うものか分からないため販売が伸び悩んでいたのですが、その後の高度経済成長による冷蔵庫や電子レンジの普及によって爆発的に売れるようになったのです。

 

他のメーカーはこの商品名が使えないため、自社で製造販売する食品用ラップフィルムには他の商品名、例えばクレラップ(クレハ)やポリラップ(宇部フィルム)、ダイアラップ(三菱樹脂)という独自の商品名をつけて販売しています。

 

ちなみにこの商品名サランラップ(Saran Wrap)は包むという意味のラップ(Wrap)に、二人の商品開発者のそれぞれの妻であるサラ(Sarah)とアン(Ann)の名前を付けたものだそうです。

 

2.ウォシュレット

今や日本を代表する電化製品といえる温水洗浄便座として世界中に広く知れ渡っている商品名ですが、これもTOTO株式会社が所有する登録商標です(商標登録第第1665963号)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じくライバル他社はこの商品名が使えないため、自社で製造販売する温水洗浄便座には他の商品名、例えばシャワートイレ(LIXIL)やビューティ・トワレ(パナソニック)、クリーンウォッシュ(東芝ホームテクノ)という独自の商品名をつけて販売しています。

 

3.宅急便

宅配サービスといえば誰もがすぐに思いつくほどに広く知られていますが、これもヤマトホールディングス株式会社が所有する登録商標です(商標登録第4939122号他)。

ライバルの宅配業者は、例えばゆうパック(日本郵便)や飛脚宅配便(佐川急便)、カンガルー便(西濃運輸)というサービス名で宅配業務を行っています。

 

ちなみに、スタジオジブリのアニメ映画「魔女の宅急便」のタイトルは、原作者が「宅急便」が登録商標であることを知らずにうっかり使ってしまったのですが、これが縁となって映画化に際してはヤマト運輸と正式なスポンサー契約の締結に至ったそうです。また、映画に出てくる黒猫のジジとヤマト運輸のロゴマークに使われているクロネコとは関係ないそうです。

 

3.バンドエイド

粘着テープにガーゼパットがあらかじめついた救急絆創膏のことをよく「バンドエイド」と呼んでいますが、この名称もジョンソン・エンド・ジョンソンが所有する登録商標(商標登録第1537538号)であり、一般名称ではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この救急絆創膏は地方によって呼び方が違うようで、関東や近畿では「バンドエイド」ですが、東北や中国、四国の九州の一部では「カットバン」、九州では「リバテープ」、北海道や広島では「サビオ」、富山では「キズバン」などと呼ばれているようです。

 

5.万歩計

これは山佐時計計器株式会社が所有する登録商標(商標登録第 1728037号)でその指定商品は歩数計です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり「歩数計」は歩いた数を計測する機器の一般名称であり、「万歩計」は数ある「歩数計」のうち山佐時計計器株式会社が製造販売する「歩数計」を差す商品名(商標)ということになります。

 

これらの登録商標はいずれも日本では長く使用されている有名なものですので登録商標とは知らずにうっかり使ってしまいがちですが、メーカーや販売店などの業者が使用するのならともかく我々一般市民がSNSやYOUTUBEなどで間違って使ってもあまり気にする必要はないと思います。

 

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審査請求はいつがいいの?
2021年12月16日

出願審査請求の手続きを何時するかは、簡単なようで実は結構難しい問題です。結論からいえば、審査請求手続きはできるだけ遅い方がよいというのが当職の考えです。以下にその理由を述べます。

 

特許出願しただけでは特許庁は審査をしてくれませんので、出願人は、以下のフローのように特許出願の日から3年以内に特許庁に審査請求の手続き(審査料の支払い)をする必要があります。特許出願の日から3年以内であればいつでもできますので、出願と同時または3年の期限ぎりぎりにしても出願人の自由です。

 

特許庁の審査は、審査請求された順番に行いますので、早く審査請求すれば、その分早く審査結果が得られます。現状では審査請求した日から約10~12ヶ月程度で最初の審査結果がきます(早期審査制度では約3ヶ月程度で最初の審査結果がきます)。

 

審査の結果、拒絶理由がなければ、特許査定(OK)となりますが、拒絶理由があればその理由と共にその拒絶通知がきます(実務上、十中八九はこの拒絶理由通知です)。この拒絶理由通知に対しては、意見書や補正書を提出して反論し、再審査を受けることができます。

 

さて、上記のように特許庁の審査は、審査請求された順番に行います。早く審査請求すれば、その分早く審査結果が得られますので、できるだけ早くしたほうがよいように思います。

 

しかし、仮に上記のように審査の結果NGになった場合には、出願人の発明はその後、誰でも自由に実施できる状態になります。

 

つまり、以下のフローのように特許出願の日から1年6ヶ月後にはすべての特許出願はその内容が公開されますので、だれでも自由に見ることができ、実施できることになります。

 

お金をかけて特許出願したにも拘わらず、特許が獲れないばかりでなく、その発明や明細書や図面に書かれたノウハウを世間に無料で公開してしまう結果となり、出願人にとっては踏んだり蹴ったりです。また、仮に特許になったとしてもその範囲が限定的(狭い)であると、他人は簡単にそれを回避した模倣をする可能性もあります。

 

そうなると、特許出願なんてしないほうがいいという極端な考え方もできますが、自社の製品が市場に出回った結果、他社がそれを模倣したときに、それを止める法的手段(法的根拠)がなにも無くなってしまいます。他人の盗用を指をくわえて見てるだけで悔しい思いをするだけです。

 

このように審査請求を早くすると結果がすぐに出てしまうため、広い範囲で特許を獲れればよいのですが、仮にNGになったときや権利範囲が狭いときのデメリットが非常に大きくなります。

 

一方、審査請求を3年ぎりぎりまで遅くした場合には、その間は特許になるかどうかが分からないグレーな期間ですので、他人は、その最終審査結果ができるまで、その発明を実施できるかどうかが分からない状態が長く続きます。また、権利範囲も決まらないため、他人は、その明細書や図面に書かれた発明の最大の範囲で特許が認められたケースも考えて行動する必要があります。

 

審査請求の期限は出願日から最大で3年、審査請求した日から最初の審査結果が届くのが約1年、仮にNGであってもその後不服審判や行政訴訟を起こせば、最終的に特許にならなかったとしてもそれが確定するのには、出願日から5年以上かかります。

 

つまり、審査請求を3年ぎりぎりまで遅くした場合には、出願日から5年以上は他人の模倣を牽制できる可能性があり、その間は実質的にその発明を独占できるという効果があります。

 

審査請求をできるだけ遅くした場合には、このような出願人にとって有利な効果があるため、特許法では、審査請求は出願人だけでなく、だれでもできるようにしています(特許法第48条の3)。出願された発明が特許になるかどうかの白黒をできるだけ早くはっきりさせたいという他人のニーズ(不利益)があるからです。なお、以前はこの審査請求期間は出願日から7年でしたが、長すぎる(出願人に有利すぎる)という理由で3年に短縮されました。

 

ですので、上記のように審査請求手続きはできるだけ遅い方がよいというのが当職の考えです。

 

その一方、できるだけ早く審査請求手続きをしたほうがよいというケースもあります。

 

第1にすでに特許出願の発明が他人に模倣されて損害が発生している場合です。

模倣している相手の行為を止めさせるためには、出願された発明が特許になっている必要がありますので、できるだけ早く審査請求すべきです。

 

第2に日本だけでなく外国出願も考えている場合です。

特許は国ごとに成立しますので外国で特許をとるためには希望する国ごとに手続きする必要がありますが、その費用は高額になります(1カ国あたり約100万円)。

 

外国への手続きは日本に出願してから1年間の猶予期間がありますので、その間に日本で特許になるかどうかの結果を知ってから手続きしたいというニーズがあるからです。この場合は日本への出願後にすぐに(早期)審査請求を行い、その結果を待ってからその後の外国出願をするか否かの判断や出願する国を決めることになります。

 

第3に、審査にパスできなかったときのために、その出願の事実や内容を闇に葬るために裏技的に出願とほぼ同時に早期審査請求をするというやり方もあります。

 

つまりフローに示すように出願から1年6ヶ月の間は、その出願の事実や内容は秘密状態ですので、その間に特許になるかどうかを早めに知っておき、仮に特許になりそうもない場合には、すぐにその特許出願を取り下げれば、誰にも知られることなくその出願の事実や内容を闇に葬ることができます。この方法であれば、NGだったときのデメリットを解消できますが、特許出願している状態の牽制効果は得られません。

 

なお、中小企業などを対象とした早期審査は、通常1年程度係る審査期間が約3ヶ月程度に短縮されるだけですので、上記第1から第3のようなケースであれば利用価値がありますが、そうでなければメリットはあまり多くないように思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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年末年始休業のお知らせ
2021年12月3日

平素は格別のお引き立てを賜わり厚くお礼申し上げます。

 

弊所の年末年始休業は下記の通りとさせて戴きますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

 

令和3年12月29日(水)~令和4年1月5日(水)まで

 

1月6日(木)からは通常どおり営業致します。

 

休み期間中のお問合せに関しては弊所のホームページの「お問合せフォーム」、もしくはメールにてお願いいたします。

 

期間中は大変ご不便おかけいたしますが、何卒ご了承くださいますよう宜しくお願い申し上げます。

 

 

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商標話し(1)iPhoneとアイホン
2021年11月18日

商標に関わる仕事をしていると面白いケースが見つかります。専門的すぎるとわかりにくいので有名なケースをいくつか上げてみましょう。

 

1.iPhone
米国のアップル社が製造販売するスマートフォンの商標で知らない人がいないほど世界的に有名な商標です。

 

当然この商標の権利は日本でもアップル社が所有していると思っている人が多いでしょうが、実は日本での商標権者はアップル社とはなんら関係のないアイホン株式会社という日本の企業です。

 

アップル社はこのアイホン株式会社が所有する「iPhone」という登録商標(商標登録第5147866)を使わせてもらっているに過ぎないのです。

 

なぜそうなっているのかその詳しい経過や事情は当事者しかわかりませんが、特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)をみればそのおおよその経緯を推測することができます(包袋閲覧すれば正確にわかりますがお金がかかりますので以下はあくまでも推測です。間違っていたらごめんなさい)。

 

アップル社は「iPhone」という商標を日本で取得するために2006年9月19日に日本の特許庁に商標登録出願(商願2006-08690)をしました。指定商品区分は第9類と第28類です。

 

ところがアップル社はその約4ヶ月後(2007年1月15日)に特許庁から拒絶理由通知を受けます。すでに日本で「iPhone」と類似する先登録商標があったのです。アイホン株式会社が所有している登録商標です。

 

 

 

 

登録第046472号(第9類:電信機,電話機)

 

 

 

登録第0808390号(第9類:電気通信機械器具)

 

登録第2382806号(第9類:配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品

 

 

このように出願した商標が他人の登録商標と似ているから登録できない、との拒絶理由通知(商標法第4条第1項第11号)を受けた場合の対応としてはいくつか考えられます。

 

(1)類似していないとの主張
まず、意見書を提出して出願商標が他人の登録商標(引用商標)と類似していないと主張することです。商標の類否判断は、同一・類似の商品に使用した際に出所の誤認混同が生じるか否か、具体的には商標の外観、称呼、観念に基づいて取引の実情を考慮して総合的に判断されます。この判断基準に基づいて考慮すれば出願商標は引用商標と類似していないと審査官に説得させれば拒絶理由は解消されて登録になります。

→しかし当然ながら審査官は過去の判例や審決、審査基準等に精通した審査のプロですのでその心証を覆すのは容易ではありません。出願商標「iPhone」と登録商標「アイホン」は外観(見た目)は異なりますが、「iPhone」は「アイホン」または「アイフォーン」と読めますので称呼は同一・類似と判断されても仕方ないかもしれません。またその商標から特別な観念も生じませんから総合的に判断すれば両商標は類似していないとの主張が認められる可能性は低いでしょう。

 

(2)引用商標の無効、取り消し
類似していないとの主張が無理であれば、次の手として引用商標の商標権を無効にしたり、取り消しにする方法があります。間違って登録されたり、登録後3年以上商標を使用していなければ、引用された登録商標を無効又は取り消しすることができます。引用商標が取り消されれば出願商標と抵触する他人の登録商標がなくなりますので拒絶理由は解消されて出願商標は登録になります。

→しかし、引用商標に無効理由がなかったり実際に使用している場合は無理ですし、無効審判や取消審判をするには時間もお金もかかるというデメリットがあります。また、敵対的な関係になりやすくその後の交渉が難しくなります。

 

(3)商標権の買い取り
引用商標の商標権を買い取る方法もあります。引用商標の商標権者と出願商標の出願人が同一であれば類似する商標を使用しても出所の誤認混同が生じないからです。交渉により引用商標の商標権を買い取り、その名義を出願人に変更すれば、出願商標と抵触する他人の登録商標がなくなりますので拒絶理由は解消されて出願商標は登録になります。

→しかし引用商標の商標権を譲ってもらえなければこの方法は無理です。特に引用商標「アイホン」は商標権者の社名と同一でしかも50年以上も使用しているブランド名ですので譲ってもらえる可能性はかなり低いでしょう。

 

(4)出願人名義変更
(3)の商標権の買い取りに似ていますが、交渉により出願商標を一旦引用商標の商標権者に名義変更して引用商標の商標権者の名義で登録してもらう方法です。上記のように出願人が同一であれば類似する商標であっても登録になるからです。そして、登録になった後にその商標権を譲り受けるか、あるいはその商標権者から専用使用権を設定してもらう方法です。

→かなりの妥協策ですがなんとしてもその商標を日本で独占的に使用したい場合にはこの方法が有効です。当然、商標権者の協力が必要ですし、相応の費用も必要です。

 

出願経緯をみてみると、なんとしても「iPhone」という商標を使いたかったアップル社はこの(4)の方法を採ったようです。拒絶理由通知を受けた後の2008年4月2日に許可を得て出願人名義変更届を提出し、その約2ヶ月後に登録査定になっています。しかし、商標権の譲り受けまでは無理だったようで登録直後の2008年7月30日に専用使用権の設定がなされています。

 

これにより現在アップル社は商標権者ではないけれど日本で「iPhone」の商標を独占的に使用できる状態となっています。

 

ちなみにネットによればアップル社から商標権者に支払われる商標の使用料は年間1億円との情報がありますが定かではありません。

 

また、アップル社からアイホン株式会社に名義変更されたのは指定商品のうち第9類だけのようで、残りの第28類についてはその後分割出願がなされ、アップル社名義で登録になっています(登録第5147917号)。

 

→商標話し(2)につづく

 

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パテントトロールは悪者か?
2021年10月28日

みなさんはパテントトロールというのをご存じでしょうか。特許に興味を持たれたことがある方であれば一度はどこかで耳にしたことがあると思いますが、果たしてどういう意味なのでしょうか。

 

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