すみれブログ
新規参入メーカーの成功例(2)-水平開きノート-
2022年03月29日

2.水平開きノート(有限会社中村印刷所)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有限会社中村印刷所ホームページより引用

 

誰でも使ったことがある一般的なノートは、開いたときにノートの真ん中の閉じてある部分が盛り上がってしまいます。この現象については、「まぁ、こんなもんだろう」と考えるか、そもそも当たり前すぎてその現象自体に気がつかない人が殆どだろうと思います。

 

ところが、この一見当たり前と考える現象について「なんか使いづらいな」と感じ、それを何とかしたいと考える人がいました。

 

東京都北区で小さな印刷所(有限会社中村印刷所)を経営していた中村輝雄さんは、当たり前すぎて殆どの人が気がつかないこの課題に着目し、約2年の歳月をかけてこれを技術的に解決するための発明を完成しました。これが「水平開きノート」という商品で、その名のとおり開いたときにノートの真ん中の閉じてある部分が盛り上がらす平ら(水平)になるという画期的なノートです。

 

この作用により、①ノド(綴じ側)まで快適に書ける、②全体が見やすく広く使える、③コピーやスキャンしても中央に影ができない、④必要なページだけを取り外すことができるといった従来製品にはない優れた技術的効果を発揮できたことから、中村さんはこの発明について2014年11月27日に特許出願し、半年後の2015年5月15日に特許を取得しています(特許第5743362号)。

 

そして、2016年の年始に中村印刷所のパート従業員のお孫さんがツイッターで「うちのおじいちゃん、ノートの特許とってた…。費用がないから宣伝できないみたい」とつぶやいたことに端を発し、その情報が拡散してネットで大ブレイク。これに新聞や雑誌、TV等のマスコミが注目してあちこちで取り上げられます。その結果、注文が殺到して小さな街の印刷所だけでは対応しきれなくなるほどの大きな反響がありました。

有限会社中村印刷所ホームページより引用

 

その後、中村さんは中国や欧州27カ国でも特許を取得しました。ちなみに欧州でしかもこれだけの国で特許を取得・維持するためには数百万以上の費用がかかりますが、なんとクラウドファンディングで乗り切ったようです。しかもこれも御年70歳を過ぎてからの行動とのことで驚きです。この特許はノートだけでなく、手帳や書籍などにも応用できますのでその可能性は無限大です。しかも、出願が2014年ですので存続期間もまだたっぷりと残っています(2034年)。

 

これらの中村さんの一連の行動を観察するとビジネスで成功するためのヒントが隠されているように思います。

①殆どの人が気がつかない課題に気がついた。
②その課題を解決するために試行錯誤した。
③試行錯誤の結果、その課題を解決するための技術的アイデア(発明)を思いついた。
④その発明を試作して製品化した。
⑤同時にその発明を保護するために特許出願した。
⑥ツイッターでその製品を宣伝した。

 

これらの一連の流れのうち、①については意外と多くの人が気がつくと思うのですが、それから実際に②や③の行動を起こす人は少なく、ここに第1の壁があるように思います。さらに③に至った場合でもそれを製品化したり、特許出願するとなると大きな費用や手間がかかりますので、これを超えて④や⑤にまで至る人は希です。ここに第2の壁があるように思います。そして、仮にこの第2の壁を突破して④や⑤に至ったとしても製品が売れる保障はありませんから、実際は①の段階で断念する人が殆どだろうと思います。

 

この結果、①に気がついた人は後から行動した人に同じアイデアを実現されて後悔してしまう場合も少なくありません。成功している人は例外なく行動を起こしています。行動しなければ失敗もしませんが成功もありません。当たり前ですがビジネスで成功するためには失敗をおそれず行動を起こすことです。ただ、多くの人は行動を起こしても成功しないことが殆どなのも知っていますので、これが二の足を踏む大きな原因となっています。

 

ちなみにこの特許(特許第5743362号)は、製造方法に関する製法特許(無線綴じ冊子の製本方法)です。製法特許の効力は、その製造方法を実施する行為だけでなくその製法で製造された製品の販売行為等にも及びますが、製品の構造が同じであってもその製法が異なるとその製品には効力が及びませんので特許出願するときには注意が必要です。

 

にほんブログ村 経営ブログ 経営者へ