すみれブログ
新規参入メーカーの成功例(1)-雪見だいふく-
2022年03月23日

日本のような少子高齢化が進んで成熟した国では市場の殆どは既存の大手業者によって独占されてしまっており、新規参入が難しいのが現状です。

 

仮に新たなビジネスモデルを考案したとしても儲けが少なかったりリスクが大きい隙間市場ばかりで大きな発展は望めそうにありません。インターネットの創世記のような大きなイノベーションが生まれない限り、残念ながら日本の産業はかつてのような隆盛を迎えることなく今後ゆっくりと且つ確実に衰退していくように感じます。

 

そういった硬直化した日本の産業構造にあって既存の市場に参入するための、あるいは既存の市場から淘汰されないための武器として最も効果的なのが「特許」などの知的財産権です。こういったなかであっても知的財産権を武器として新規参入メーカーが既存の市場に乗り込んで成功した例をいくつかご紹介します。

 

1.雪見だいふく(株式会社ロッテ)

 

 

 

 

 

ロッテホームページから引用

まずは少し古い例になるのですが、チューインガムで有名なロッテはアイスクリーム業界では後発メーカーであり、参入当時は先発の乳業各社が高いシェアを持っていました。しかし、ロッテは独自の技術によってアイスクリームを餅で包んでも固くならない被覆冷菓を開発し、これに「雪見だいふく」と名付けて全国で一斉発売したところ、女子中・高校生を間で評判となり、瞬く間に大ヒット商品となりました。

 

これに衝撃を受けた多くの既存メーカーは、次々と類似品を開発・販売して対抗しましたが、この商品は既に特許出願されており、多くの既存メーカーは事前に情報提供をするなどしてその審査経過を固唾を飲んで見守っていたようです。

 

特許情報データベース(J-PlatPat)の経過情報をみると、この特許は昭和56年(1981年)5月29日に特許出願、昭和58年(1983年)1月31日に審査請求、翌昭和59年(1984年)2月13日に出願公告(今でいう特許査定)となっています。

 

ところが出願公告の直後に実に7件もの異議申立がなされます。そして再審査が行われた結果、翌昭和60年(1985年)7月23日に異議が認められて一転、拒絶査定となってしまいます。

 

これに対してロッテは、同年8月21日に直ちに拒絶査定不服審判を請求し、4年後の平成元年(1989年)10月13日に特許審決を受けて同年12月21日にようやく特許を取得することになります(特許第153751号)。

 

ここに至るまでに実に約8年もの期間を要していますが、この特許を境に他社の類似品は水を引くように消えていきます。その後、この特許は平成3年(2001)年5月29日の存続期間満了まで存続し、現在は既に消滅していますが、それまでに培ってきた信用や実績の結果、特許が切れて20年経った令和の現在においてもこの商品を凌駕する同種の商品は現れず、実質的な独占状態を維持するに至っています。

 

そして、ロッテはこの「雪見だいふく」をきっかけにして様々な冷菓を次々と発売して業界参入に成功し、アイスクリーム業界を代表するメーカーの1つになったのです。

 

ちなみに、この特許の請求の範囲は「略アミロペクチンより構成されるでん粉糖類との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓を被覆することを特徴とする被覆冷菓」と実にシンプルな構成となっており、他社はこれを回避した商品の開発や権利無効にすることは断念したようです。

 

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