すみれブログ
侍(サムライ)の刀
2021年09月10日

特許権や商標権をもつメリットはなんですか?と訊かれたとき、私は「特許権や商標権というのは侍が腰に差している刀のようなものです」と答えることがあります。

 

なぜ侍は常に刀を腰に差していたのでしょうか。いうまでもなく刀(日本刀)というのは武器の一種であり、戦いや自分の身を守るときだけでなく奉公する主君が刺客や暴漢から襲われたときに敵を強制的に排除するために必要不可欠なものです。通常は2本差しといって打刀の他に脇差し(小刀)の2つを帯刀していることが多かったようです。

 

さらに戦いのときだけでなく普段でも刀を持っていることを周りに見せつけることによって自分は武士であることを誇示すると共に、もし無礼な態度をとったら切りつけるぞといった暗黙の脅しや牽制効果を狙ったものと考えられます。

 

とはいっても群雄が割拠する戦国時代ならともかく江戸時代のような平和な時代では後者の理由がメインで、なかには手入れのとき以外生涯一度も鞘から刀身を抜いたことがない侍もたくさんいただろうと思います。

 

桜田門外の変では護衛の任にあたった彦根藩士が雪対策のために刀に柄袋をかけており、これが原因でとっさに抜刀できなかったため対応が遅れてしまい、大老の井伊直弼を護れなかったという話は有名です。それほどまでに江戸時代では侍が実際に抜刀して振り回す機会は珍しかったのだろうと思います。

 

ですのでいざ抜刀したとしても本人の経験や実力不足で返り討ちにあってしまうことも多かったかもしれません。宮本武蔵のような剣術に長けた侍ならともかく、たいして実力のない普通の侍がむやみやたらに刀を抜いて斬りかかるというのはあまり賢いやりかたではないのです。

 

また、浪人のような貧しい侍ともなると刀身が竹でできていて抜きたくとも人前では抜けないものも多くいたことでしょう。

 

特許権や商標権などの知的財産権は、物権や債権のような財産権の1つですので他人が勝手にその権利を侵害した場合には、差止請求や損害賠償請求といった法的な責任を追及することができます。悪質な場合は刑事告訴して刑事罰を科すこともできる強い権利です。まさに侍がもっている刀のようなものです。

 

その反面、知的財産権といってもその中身は玉石混淆であり、なかには実際に裁判となると相手方からの抵抗や返り討ちにあって取り消しや無効にされたりするなど案外脆い権利ともいえます。また、裁判ともなると多額の費用や時間、エネルギーを要します。

 

そうなるとやたらと権利を行使するのは得策とはいえません。とはいっても丸腰でははなから相手から舐められてしまいます。自分の大切なアイデアや信用を無断でパクられてしまい悔しい思いをする羽目となります。

 

ですので本当に護りたいアイデアやブランドがあるならば、是非ともそれを特許権や商標権で保護するべきです。そして、それを積極的にアピールして自分の武器(刀)をまわりに見せつけることです。そうすればその刀をみた相手はそれをパクると面倒なことになるからそのアイデアだけでなくそれと紛らわしい行為をすることも躊躇します。特にコンプライアンスの意識の高い日本人の場合はそれが顕著です。

 

現代のビジネスマンが知的財産権をもってそれをアピールすることは昔の侍が刀を持っていることを周囲に見せつけることと同じです。見せつけることで相手を牽制するのです。そして、いざとなったらその刀(知的財産権)を抜いて戦う(裁判)という覚悟を示す。

 

これこそがまさに現代の侍(ビジネスマン)が知的財産権という刀をもつことの最大の効果だと思います。

 

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