すみれブログ
士業の倒産
2020年06月29日

最近、東京の法律事務所が約51億円に及ぶ負債総額を抱えて破産したようです。日本最高の国家資格である弁護士の破産というのは珍しいのですが、その負債が51億円というのも驚きです。

 

なぜそんな多額の負債を抱えてしまったのかはっきりと報道されていませんが、ネットの噂によると過払い請求業務の名義貸しが原因のようです。詳しい内容は既に多くのサイトで紹介されていますので割愛しますが、噂によると弁護士と業務提携した元サラ金業者が顧客の紹介や広告などの過払い請求業務を牛耳っていて顧客への返済金のほとんどを着服してしまったとのこと。

 

当然今後司直の手が入り事件の全容が明らかになると思いますが、法律に詳しいはずの弁護士が悪賢い連中の餌食になったのは間違いないようです。

 

弁護士や医者というと我々一般庶民にとっては社会的ステータスと経済的に恵まれた特殊な人たちというイメージがありますが、近所の○○屋さんや×○△店のように実態は普通の自営業者と何ら変わりありません。ただ、彼らには一般人が簡単に立ち入ることができない専権業務が法律で与えられているだけです。

 

昔の弁護士はその希少性故に事務所を構えているだけで仕事(依頼)がバンバン来たようですが2000年頃の司法改革によって弁護士が一気に増えたことで競争原理が導入されていわゆる食えない弁護士が続出しました。

 

司法改革以前から業務をやっていた古参の弁護士はそれまでの顧客とのつながりがありますから弁護士が増えても急に困ることはないのですが、司法改革で誕生した多くの新人弁護士は既存の弁護士事務所への就職もままならず、十分な実務経験を得る機会もなく即独するしかなかったようです。

 

その頃にちょうど過払い金に関する画期的な最高裁判決がでていわゆる過払い金訴訟ブームが起き、多くの弁護士が濡れ手に泡のような簡単に金儲けできる状態になりました。当然食えない弁護士達の多くはそのブームに乗り遅れるなとばかりに続々と参入することになりますが、すべての弁護士が大量の顧客を捕まえて効率的に処理するようなノウハウを持ち合わせているわけではありません。

 

そういった仕事もノウハウもない弁護士が元サラ金業者というその道のプロにつけいれられ意のままに操られていたのが今回の事件の実態のようです。本来司法試験に合格するほど頭のいいはずの弁護士がまんまと付けいれられるというのはやはり「貧すれば鈍す」というか、毎月の事務所の家賃や従業員の給料などといった経済的な悩みが感覚を鈍らせてしまったのでしょうか?

 

士業の多くはその難関試験を突破した事実と専門的知識ゆえに、まわりからは「先生、先生」と持ち上げられることが多いのですが、それを勘違いして道を誤る人が多いのは非常に残念です。国家資格は単なるライセンス(業界への入場券)であってそれから実務や経験を何年にも亘って地道にコツコツと積んでこそ初めて専門家として認めれるものです。自分の身の丈に合わない業務は身の破滅を招くだけでなく周りにも迷惑を掛けてしまう結果となってしまいます。

 

弁理士の中にも顧客の預かり金に手をつけたり拒絶理由通知書を偽造したりして懲戒処分を受けて廃業する例が散見されます。こういった事件を他山の石として明日は我が身とならぬよう肝に銘じなければなりません。

 

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