すみれブログ
商標権でAmazonの相乗り防止?(その1)
2017年04月14日

1年ほど前からでしょうか。

 

Amazonの出品業者らしき方から商標権の取得についてのご相談やご依頼が徐々に増えてきました。Amazonの商品ページへの相乗りを防ぐための商標権を取得したいがどうしたらいいのかというご相談です。

 

ちなみに弊所の方針ではどなたからのご相談も基本無料です。ですので時間があればその都度丁寧にお答えしているのですが、最近ちょっと負担になってきたのでそろそろ見直そうかと考えている次第です。

 

さて、冒頭の商標の相談ですが最初受けたときには何を言っているのかさっぱり理解できませんでした。考えてみれば無理もありません。そもそもAmazonの相乗りというシステム自体を知らないわけですから。

 

まぁ、いまでも完璧に理解したというわけではないのですが、いろいろ調べてようやく分かりましたので自分なりに理解した範囲でご説明します。

 

まず、この「商品ページへの相乗り」を説明する前にAmazonのビジネスモデルを理解する必要があります。Amazonといえばインターネット上の世界最大のショッピングモールです。現実社会のショッピングモールというと例えばイオンとか三井不動産のようなデベロッパーが場所と巨大な建物(器)を用意し、そこに多数の小売業者が出店料を払って出店するというものです。

 

ある商品が欲しいと思っている消費者はそのショッピングモールに出店しているお店のなかからその商品を取り扱っているお店を見つけ、実際に入店して目的とする商品を吟味して購入するかどうかを決めます。このシステムをそのままインターネット上に再現したのが楽天やYahooショッピングです。

 

ところが、Amazonの場合はこのような小売店ベースのビジネスモデルではなくあくまでも商品ベースの出品形式となっていて、お店自体は表にでないようになっているのです。これは推測ですが商品が同じであればどこで買っても差が無いからショップはどうでもいいと考える人の需要をAmazonは狙っているのではないでしょうか。

 

例えばソニーのPS4であれば近所のA店で買おうがネット上のB店で買おうが、PS4自体の品質やメーカー保証は一緒だから関係ない、あとは安い方から買うだけ、と考える消費者は少なくないと思います。かくゆう私もそういった考え方で、この店でなくてはならないというこだわりは一切ありません。

 

私に限らずそう考える消費者が多いからこそ、売り手の方はお店独自のポイント制や即日配送などの価格以外のサービスを付加することでなんとか顧客と取り込もうと涙ぐましい努力をしているわけです。

 

また、商品ベースとなると多くの品数や大量に商品を取り扱うことがない個人事業者やサラリーマンが副業で簡単に出品(参加)できるというメリットもあります。

 

こういった独自のビジネスモデルでAmazonは急成長してきたわけですが、実はこの商品ベースの出店方法というのが出品者、特にノーブランド商品の転売を目的とする業者にとって大きな問題を招く要因ともなっているのです。

 

つまり、ある商品を出品するに際してその商品がAmazonで扱っていない新しい商品である場合、その出品者(セラー)は、その商品を紹介するページ(商品ページ)を新たに作る必要があります。

 

そう、あの膨大な数の商品ページはAmazonが作っているのでなく、出品者が汗水流して作っているのです。もちろん、フォーマットや記載事項などの基本的な部分はAmazonが提供するのですが、価格はもちろん商品の画像写真や製品紹介などの細かい事項はすべて出品者自身が作成しているのです。そして、その商品に興味のある消費者はその商品ページの商品画像や商品説明、カスタマーレビューなどを参照して購入を決めるようになっているのです。

 

それでは、すでに商品ページが存在している商品と同じ商品を他人が後から出品するにはどうしたら良いでしょうか?この場合その他人が新しく別の商品ページを作成することも可能なようですが、Amazonとしては同じ商品について複数の商品ページがあることを好ましく思っていないようで、すでに商品ページがある場合には、その商品ページにまとめて掲載するように推奨しているのです。このように既にある商品ページに他人が自分の商品を後から掲載することを冒頭の相乗りというのです。

 

実際のAmazonの商品ページをご覧頂けると分かりやすいと思いますが、この相乗りが起こるとその商品ページの右下あたりにある「こちらからもご購入いただけます」という欄に他の出品者の数および各出品者ごとにカートボックスが表示されるようになります。

 

そして消費者がこの欄をクリックするとページが変わり、他の出品者が出品している商品の価格および簡単な説明とカートボックスがズラーっと一覧表示されます。そして、消費者はその中から気に入ったものがあればそれを選んで購入手続(カートボックスのクリック)に移るわけです。

 

さてここで1つの問題が発生します。

 

その商品ページをみた消費者がその商品ページを作った出品者の商品を選んで購入すれば良いのですが必ずしもそうとは限りません。特に商品が同じであれば少しでも安い方から買いたいと思うのが消費者心理です。価格は出品者の意思で自由に設定できますので、その商品ページを作った出品者からではなく、その商品ページに相乗りした他人から購入することもあるわけです。

 

そうすると最初に商品ページを作った出品者にとっては、せっかく汗水流して高品質の商品ページを作って良い評価が得られるまで育てたのに後から相乗りしてきた他人にペロッとお客を奪われてしまったのでは納得がいきませんね。逆に相乗りした側にとっては他人が汗水流して作った商品ページをタダで使わせてもらった上に商品まで売れてしまい、漁夫の利を得る結果となります。

 

その商品ページに掲載されている商品自体はどれも同じですので、このような相乗り現象が起こると最後には価格競争になってしまい誰も儲からなくなってしまいます。それでもAmazonとしては少しでも安く商品を提供する方を重視しているようで、このような相乗り現象を排除するのではなく、むしろ積極的に推奨というか義務化までしようとしているのです。

 

さらに問題なのはこの商品ページ自体およびその商品ページに記載した商品画像や商品説明などは規約上すべてAmazonの所有となるため、その商品画像や商品説明は、商品ページの作成者だけでなく他の出品者でも書き換えることが可能なのです。その結果、他人によって他の商品画像に変えられたり、商品内容を書き換えられてしまい、そのページを乗っ取られてしまうこともあるのです。

 

さらに最悪なケースとしては他の出品者の商品が粗悪品だったり配送が遅れるなどのトラブルが発生すると、それがその商品ページのカスタマーレビューに反映されてしまい、他の真面目なセラーの商品価値まで下けてしまう結果となります。トラブルを起こした本人はそのまま撤退してしまえばいいですが、残された他の出品者は大迷惑です。

 

そうすると商品ページを作った出品者としてはなんとしてもその商品ページを独占して他人の相乗りを防ぎたいと思うことでしょう。…でも果たしてそれは可能なのでしょうか?

 

---ちょっと長くなってしまったので続きは次回--

 

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