すみれブログ
共同出願,共同経営はやめたほうがいい?
2015年06月18日

特許権も不動産や物と同様に所有権の一種ですから、1つの特許権を2人以上で共同で所有することが可能です。通常は、特許出願の際に願書にそれぞれが出願人として記載するだけで比較的簡単に共有者になることができます。

 

2社以上で技術提携や共同開発などを行った際に共有となるケースが多いようです。また、願書に持分を記載すればそれぞれの持分を明確にすることも可能です。

 

しかし、私はこの共同出願はあまりお勧めしません。

 

というのも特許権が共有の場合、原則としてそれぞれが自由に実施できるものの持分を他人に譲渡する場合や他人に実施権を設定する場合などに他の共有者の同意が必要になる等の制約があるから…、というのもありますが、実は両者の関係が解消した場合の特許の取り扱いについて揉めるケースが多いからです。

 

愛し合って結婚した筈の夫婦の3組に1組が別れる時代です。ましてやビジネス上の利害関係だけで特許の共有者になった場合、利害や意見が対立したら簡単に関係が解消されます。

 

特許権は出願日から最大で20年間存続しますから特許権が存続している限り、共有関係もずっと続きます。その間に出願時のような蜜月状態が続けば良いのですが、そうはいかないのが現状です。

 

だったら出願の際に両者の関係が解消したときの特許の取り扱いについて契約書等を交わしておけばいいじゃないかという意見もあります。確かにその通りなのですが、結婚を目の前にしている男女が普通、離婚後の財産分与の契約書を交わようなことをしていないのと同じように実際にはなかなか難しいようです。

 

ですので、もちろん私の方から積極的にアドバイスすることはしませんが、もし単独出願か共同出願かで相談されたら、例えば一方が費用を全部負担する等して、できるだけ単独名義で出願することをお勧めしています。

 

これは共同して会社や事務所を経営する場合にもいえます。2人以上が組んで共同で会社なり事務所を経営すれば万が一のことがあっても心強いし、それぞれが資金を持ち寄れば大きく事業を展開することができます。

 

しかし、いろいろな会社や事務所をみているとこの共同経営というのもなかなか難しいのが現状です。経営というのはずっと続きますから必ず経営方針で意見や考えが対立します。このときにはどちらかが折れなくてはならないのですが、対等な関係であるとどっちも折れずにやがて喧嘩別れというパターンがしばしばあります。

 

離婚の方が結婚よりも数倍のエネルギーを使うと言われていますが、共同経営を解消する場合も同じです。一方の経営者が抜けるときに有能な社員をごっそり引き抜いていってしまったといった例も知っています。

 

世の中には共同経営の会社や事務所はたくさんあり、実際にうまくいっているではないかという意見もあります。でも、よくよく観察すると共同経営というもののそれは形だけで実際には一方が他方に給料を支払う立場だったり、一方が株の大部分を所有している等、実体は主従関係であるのが殆どです。

 

ですので経営も単独ですべきですが、共同経営の場合も確かにメリットがあります。この場合は、なるべく似たもの同士でなく、お互い足りない部分を補う関係であることが重要です。例えば、一方が営業のプロであり、他方がお金や商品開発のプロなどであれば、対立することも少ないだろうし、テーブルの脚のようにそもそもどちらかが欠けたら会社が建ち行かなくなってしまうような関係が望ましいのです。

 

にほんブログ村 経営ブログ 経営者へ