すみれブログ
まだやってたの?(切り餅事件のその後)
2015年05月5日

2009年に始まった切り餅事件先月末に被告となる「サトウ食品工業株式会社」が控訴を断念し、これによって6年に亘る一連の裁判がようやく終了しました。

 

切り餅事件とはなんぞや、という方のために簡単に説明すると、新潟県長岡市にある「越後製菓株式会社」が同じく新潟県の新潟市にある「サトウ食品」が製造・販売する真空パック式の切り餅が自社の特許権を侵害するとしてその損害賠償を求めていた裁判です。

 

原告である越後製菓の特許は、真空パック式のブロック状の餅片の側面にその周方向に沿って切込み(スリット)を入れただけの発明ですが、これをサトウ食品側が無断で実施していたため、越後製菓がサトウ食品に対して、「実施するのは構わないけど、ちゃんと特許の使用料を払ってね」といったのがきっかけで始まった争いです。

 

サトウ食品の言い分としては、「そんな発明は昔からやっているからその特許は無効だ」というもので、東京地裁で争われた第1審ではその主張が受け入れられて見事勝訴を勝ち取ったのですが、その控訴審である東京高裁(知財高裁)では、なんと予想だにしていなかったまさかの逆転負け。

 

その控訴審での中間判決後には、弁護団を総入れ替えして元メジャーリーガー、もとい元知財高裁判事という強力な助っ人を含む精鋭部隊を編成して対抗するもすでに時遅し。あえなく敗退となってしまいました。

 

その後、お決まりとおり最高裁判所に上告するも結果は実質的な門前払い(上告不受理)。これで敗訴が確定してしまいます。

 

これで終わりと思いきや、勝訴した越後製菓側はさらにおなじ特許権侵害に基づく第二次訴訟を起こします。裁判を起こしたにもかかわらずサトウ食品が継続してその特許を無断実施していたため、その後に発生した損害の賠償を求めるというものです。

 

この第二次訴訟、サトウ食品側としてはさぞやショックだろうな思ったのですが、意外にも捲土重来。なんと逆に汚名をそそぐ大チャンスととらえたのでした。 そして知財高裁で悉く却下された山のような証拠を用意して返り討ちを果たすべく意気揚々と裁判に臨んだのですが、第一次裁判の結果が大きく影響して再び敗れる結果となってしまいました。ダブル敗訴です。

 

結局、サトウ食品は越後製菓に対し、この第一次訴訟と第二次訴訟合わせて約16億円あまりの損害賠償金を支払うことになりました。

 

さて、この切り餅事件、これにて一件落着とおもいきやまだ終わっていないようなのです。実は、この特許を無断で実施していたのはサトウ食品だけでなく、またまた同じ新潟県の燕市にある「株式会社きむら食品」も同じく餅の側面に切込みをいれた製品を製造・販売していたのです。

 

しかも、このきむら食品、上の裁判ではサトウ食品側の証人となり、越後製菓の特許の無効を主張していた当事者の一人なのです。敵の味方も敵というわけでもないでしょうが、今度はきむら食品に矛先が向いてしまったようです。きむら食品としては今後厳しい裁判を戦うことになるでしょう。

 

この特許、たかが餅の側面に切込みを入れただけの簡単な発明ですが、簡単であるが故に誰でも簡単に実施できることから、実際の争いになると莫大なお金が動くという典型的な事例ですね。

 

 

 

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