すみれブログ
いつやるの? 今でいいの?(審査請求のタイミング)
2014年04月7日

特許は申請(出願)しただけでは審査して貰えませんので、特許庁に対して「私の発明を審査して下さい」という手続(出願審査請求手続)をしなければなりません。

 

この手続は、出願から3年以内であれば何時でもすることができますので出願と同時にすることはもちろん3年の期限ぎりぎりにすることも可能です。

 

そうするとこの手続をいつするのかという判断が難しくなってきます。特に出願から1年6月後には出願した内容が強制的に公開される都合上、そのタイミングは非常に重要となってきます。

 

出願と同時に審査請求を行えばその分早く審査して貰えますので、早期に特許権が発生し、長期に亘って特許権を維持することが可能です。しかし、特許になるとその発明の内容が特許公報として世間に公開されてしまうため、ライバルからしてみれば、その特許の内容だけでなくその権利範囲も早期に知ることが可能となります。

 

最近は特許の審査期間が非常に短くなってきていますので、出願と同時に審査請求すると出願公開前にその発明が特許になるケースが増えてきています。

 

この場合、実際に得られた権利範囲が十分に広ければ問題ないのですが、権利範囲が狭いとライバルはその権利範囲を巧妙に回避して似たような製品を開発することも可能です。

 

一方、拒絶になったときは出願から1年6ヶ月以内にその特許出願を取り下げればその特許出願は公開されませんので、その出願の事実や内容を永遠に闇に葬ることができます。このため、発明が製造方法などの場合にはそのままノウハウとして保護することも可能です。

 

これに対し、3年の期限ぎりぎりに審査請求した場合には、その審査結果が届くのが約4年後となります。このため、その分だけ特許権の存続期間は短くなるのですが、少なくともその4年間は権利範囲が確定しておらず、開示された範囲で他人の実施を牽制することができますので、その期間は実質的にその発明を独占することが可能です。

 

つまり、法令遵守意識の高い日本の企業の場合は、他人の出願中の発明を安易にまねるようなことはありませんので、例えば製品や広告に「特許出願中」と入れるだけでも大きな牽制効果が期待できます。

 

ちなみに、この審査請求期間、かつては出願日から7年でしたが、それではあまりにも長すぎるということで3年に短縮されました。他人にしてみれば7年以上もその結果をじりじり待たなくてはならなかったわけです。

 

そうすると審査請求はなるべく遅い方がいいと考えがちですが、既に似たような製品が出回って損害が発生している場合には、できるだけ早く権利を行使するために直ぐに審査請求をしたほうがよい場合があります。

 

また、既に実施している他人に対して権利行使すると、相手の抵抗にあって出願人(特許権者)と無効審判や特許裁判で揉める可能性が大きくなります。

 

そのため、他人が実施する可能性が高い発明の場合には、他人の実施前に権利化しておくためにできるだけ早く審査請求をしておいた方が良いケースもあります。また、自己の実施時期との兼ね合いも考慮する必要があります。

 

さらに、出願が公開されると実施料相当額を請求できる権利(補償金請求権)が発生し、また、この出願公開の時期は請求により1年6ヶ月前に早めることもできます(早期公開制度)。さらに、出願から1年以内であれば再出願(国内優先権)も可能です。

 

特に外国出願も視野に入れると早めに白黒付けておきたいケースもあります。

 

最近は、思い立ったら直ぐにやるのがトレンドのようですが、審査請求手続の場合はこれら諸々のことを考慮する必要があり、その時期を決めるのはなかなか容易ではありません。

 

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