全くもって自慢にもならないのですが、私はいまだかつて刑務所というところに入ったことがありませんし、実際に入ったことがあるという知人もおりません。
ですので、その内部や実体は本やテレビでしか知ることができないのですが、当然ながらそれなりに厳しいところであることは間違いないようです。
こういうところに入る人たちというと、詐欺や窃盗、暴行、傷害、殺人等といった凶悪な犯罪を犯した反社会的勢力団体に属する人か、まともな職に就けない人たちというイメージがありますが、なかにはそうでない人もいるようです。
東大卒のエリートで大手製紙メーカの御曹司、その後グループ各社の社長を経て本社の社長から会長にまで至るという、いわば資本主義社会の頂点に属するような人がつい最近収監されました。
大王製紙の創業家経営者で前会長の井川意高(49)受刑者です。
連結子会社4社から計32億円を指定の銀行口座に振り込ませて損害を与えた特別背任罪で懲役4年の実刑判決を受けてのことです。
この人が昨年末、「熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」(双葉社)と題する懺悔本を出しました。↓
この本によれば、マカオやシンガポールのカジノで総額106億円もの大金をすべて失くしてしまったそうです。
毎週金曜日の夜に日本を発って朝方にマカオやシンガポールに着き、そのまま現地のカジノでバカラなどのギャンブルを夜通しぶっ続けで行い、日曜日の夜に現地を発って朝方に帰国するという生活を繰り返していたそうです。
現地ではジャンケットとかいう専用の仲介業者をひきつれてホテル専用のVIP室でプレーし、多い日には一回で20億円もすってしまったときがあるとか。
20億円ですよ、20お・く・え・ん。
大手企業に勤務するサラリーマン10人分の生涯賃金で、ちょっと大きめの中小企業の年商並です。
パチンコや競馬で数万円負けた程度で熱くなっている庶民からみると、なんというか、笑ってしまいますね。
関与した子会社にしてみれば、創業家経営者で大株主である井川家の人間からの依頼であれば断るわけにもいかず、いわれるままに黙って金を出すしかなかったのでしょうか。
広尾の豪邸に住み、運転手付きの高級車で毎晩銀座や六本木の高級クラブで豪遊していた人が、今ごろ酒も女も暖房もない刑務所の畳の上に敷かれたせんべい布団の中で寒さをこらえながら何を思っているのでしょう。
ただ、冷静に見てみるとこの事件、一応特別背任罪とはなっていますが、実際には借入金の全額を返済し、子会社には実質的に損害を与えていないため、実刑はちょっと厳しく、みせしめという気がしないでもありません。
ちなみに、われわれ士業といわれる職業の人のなかにも罪を犯して逮捕されるものがいます。弁理士の場合はそもそも数が少ないため(1万人程度)、めったにないようですが、弁護士や税理士の場合は数が多い上にお金に絡む事案が多いため、脱税に関与したり、客の預かり金を着服した容疑で逮捕され、実刑が確定して収監されるというケースがたまにあるようです。