すみれブログ
WTOとFTAとTPP
2014年02月26日

みなさんは、この違いが分かるでしょうか?

 

WTOとは、スイスのジュネーブに本部を置く世界貿易機構(World Trade Organization)のことで、世界の貿易に関する基本的なルールを取り扱う唯一の国際機関です。

 

一方、FTAとは、WTOが定めるルールの例外として認められている、特定の国や地域の間だけに適応される貿易ルールを定めた自由貿易協定(Free Trade Agreement)のことです。

 

つまり、WTOが定める貿易の原則は「実質上すべての貿易の自由化」を行うことを条件に「すべての加盟国に対して等しく適応する」というものですので、新しくルールを決める場合にはあくまで全会(全加盟国)一致が原則です。

 

ですが、どの国でもいろんなお家の事情があるわけですから、ルール1つ決めるにしても利害が対立することが殆どで、どこかの国が新しいルールを提案しても一向に決まりません。実際、WTOの交渉自体は現在、事実上の凍結状態です。

 

そこで、取り敢えず交易が盛んな特定の国や地域の間だけに適用されるルールを決めてしまおうというのがFTA(自由貿易協定)です。

 

例えば、日本が外国から輸入する牛肉に対して50%の関税を掛けると決めた場合、WTOのルールによれば、日本はすべてのWTO加盟国から輸入される牛肉に対して等しく50%の関税をかけなければなりません。

 

オーストラリアから輸入される牛肉に対しては50%の関税を掛けるけど、米国から輸入される牛肉に対しては関税を30%にします、ということは許されないのです。

 

そこで、日本はオーストラリアと米国との間でこのFTAを締結し、オーストラリアと米国から輸入される牛肉だけは30%の関税にします、その代わり日本からオーストラリアと米国に輸出される自動車の関税を他の国よりも低くしてね、というわけです。

 

日本は既に南米チリとの間でこのFTAを締結しています。近所のスーパーで安値で売られている外国産ワインの殆どがチリ産なのはこのFTAにより関税が撤廃されているからです。

 

そして、TPPというのはこのFTAのひとつで、互いに貿易が盛んな太平洋を取り囲む国々で取り交わされた自由貿易協定(環太平洋パートナーシップ協定:Trans-Pacific Pertnership Agreement)のことをいいます。

 

このTPPは、「例外なき関税撤廃」を原則として10年以内にすべての品目で関税をなくそうとするものです。現在、ニュージーランド、チリ、シンガポール、ブルネイを始め、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの9カ国で構成され、さらに広い範囲の協定にすることを目指す交渉を開始しました。

 

最近、日本がこれに参加するかどうかの交渉を始めたのが大きなニュースになっているのですが、上記のようにTPPでは農畜産物も関税撤廃の対象となるため、米や小麦、砂糖、畜産物なども関税ゼロで輸入されることになります。

 

従って、日本がこのTPPに参加すれば、米国やオーストラリアなどから安価な農畜産物が大量に国内市場になだれ込み、国内の農畜産業が大打撃を受けると懸念されているのです。

 

そのため、日本政府としては昨日までこの農畜産物をセンシティブ項目と定めて関税ゼロの例外を求めて交渉をしていたようですが、TPPは「例外なき関税撤廃」が原則ですので、交渉相手の米国がこれを認めないというのが大きなニュースになっていました。

 

考えてみれば、日本がTPPに参加する大きな理由は、自動車をはじめとする日本の工業製品の外国(特に米国)での関税撤廃による売り上げ増を目的としているのに、日本に輸入される物のうち農畜産物だけは例外でこれには関税を掛けるのを許してね、というものですので、他の国にしてみればずいぶん虫のいい話しです。

 

「彼方立てれば此方が立たぬ」状態で政治的に非常に難しい問題ですが、私個人としてはやはり日本はTPPに参加して農畜産分野を始めとするあらゆる分野で国際競争力をつけることこそが将来の日本にとっていい方向に作用すると思います。

 

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