すみれブログ
小保方特許(STAP細胞)の行方
2014年02月10日

先週話題になった理化学研究所の小保方博士が発見したSTAP細胞については既に国際特許出願(PCT/US2013/037996)がされ,その内容が公開されていましたので、この国際公開公報の読み方をちょっとやじうま視線を交えて解説したいと思います。

 

・International Filing Date:24.04.2013:(国際出願日)
国際出願日は昨年の4月24日で、米国特許商標庁(USPTO)を受理官庁として国際出願されています。

 

・Publication Date: 31.10.2013 :(国際公開日)
本願は昨年の10月31日に国際公開されています。国際出願は原則として国際出願日から18ヶ月後にスイスのジュネーブにある国際事務局(WIPO)で国際公開され、誰でも見ることができます。この18ヶ月は、優先権主張を伴う場合は優先日(基礎出願日)から計算されますので、優先権主張を伴う本願は国際出願日から約半年後に公開されたことになります。

 

・Applicants: (出願人)
出願人は、THE BRIGHAM AND WOMEN’S HOSPITAL, INCという米国の企業(研究所)と、日本のRIKEN(理化学研究所)と、TOKYO WOMEN’S MEDICAL UNIVERSITY(東京女子医大)の三者で、共同出願となっています。従って本願が特許になった場合、特許権はこの三者の共有となります。

 

・ Inventors: (発明者)
発明者は、VACANTI, Charles A.; (US)、VACANTI, Martin P.; (US)、KOJIMA, Koji; (US)、OBOKATA, Haruko; (JP)、WAKAYAMA, Teruhiko; (JP)、SASAI, Yoshiki; (JP)、YAMATO, Masayuki; (JP)の7名となっています(敬称略)。前者の3名が米国籍の方で、小保方さんを含めた残り4名の方が日本人です。この公報を見る限りでは誰が真の発明者(発明の貢献度)かは分かりません。

 

・Agent: (代理人)
RESNICK,Davidという米国マサチューセッツ州に事務所がある特許弁護士がこの出願の代理人となっているようです。ちなみに米国特許代理人は世界で最も費用が高く、しかもこの出願は明細書だけでも130頁にもおよぶ大作ですので、おそらくこの代理人から出願人には、数万ドルの請求書が送られていると思われます。

 

・Priority Data: (優先日)
通常、日本人(日本企業)が海外で特許を取得する場合、まず日本に特許出願して先願権を確保してから日本国特許庁(JPO)に国際出願するのが一般的ですが、この出願は2012年4月24日と2013年3月13日にした2つの米国出願を基礎として優先権を主張してその1年後(2013年)にUSPTOに国際出願されていることが分かります。Japan passingです。

 

・Title:(タイトル)
発明の名称です。「GENERATING PLURIPOTENT CELLS DE NOVO」は多能性幹細胞の製造方法とでも訳すのでしょうか。

 

Abstract: (要約書)
本発明の概要を簡単に説明したものです。(iPS細胞のように)遺伝子を導入することなく多能性を発揮できる、というようなことが書かれています。

 

・Designated States: (指定国)
この出願に関し、将来、特許を取得する可能性(権利)がある国名(指定国)が書かれています。すべてのPCT加盟国(全指定)が載っていると思われます。当然、日本(JP)や米国(US)、中国(CN)、ヨーロッパ諸国(DE,FR,IT…)が対象に含まれています。ちなみに北朝鮮(KP)もあります。

つまり、この出願は未だ国際段階で、優先日から30ヶ月または31ヶ月以内(2014年10月頃まで)に、これらの国の中から特許を取得したい国に対して国内移行手続を行う必要があります。

仮にこれら全ての国で特許を取得した場合、数千万円から場合によっては億単位の費用が発生することが予想されます。でも、それだけ費用を掛けても価値のある特許かもしれませんね。

各国での手続は原則としてその国の弁理士に頼むことになりますので日本では誰がなるのか気になるところです。おそらくこの米国代理人(RESNICK, David氏)か理研とつきあいのある弁理士がなるものと思われます。ちなみに私は無理です(笑)。

 

・Publication Language: Filing Language:
出願言語、公開言語のいずれも英語です。

 

・Description: (明細書)
この発明の内容を記載した書面です。130頁にもおよぶ大作です。

 

・Claims: (請求の範囲)
権利として要求する具体的な発明の内容です。請求項毎に発明が存在しており、その数は「74」です。請求項1が最も権利範囲が広く、以後徐々に技術的に限定された構成になっています。

 

・Drawings: (図面)
明細書と共に発明の具体例を説明する書面です。本願では37頁に亘って書かれています。

 

・International Search Report: (国際調査報告書)
国際出願は全て国際調査機関で関連する先行技術が調査され、見つかった文献はその特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)の見解と共に公開されます。

本願では調査の結果、3つの有力な米国特許公報が見つかり、これらの公報に基づいて本願の請求項の殆どがX評価(ダメ)またはY評価(たぶんダメ)となっています。調査段階では殆どの請求項で新規性および進歩性が欠如しているとの判断を受けているようです。

 

発明としては画期的なものであったとしても特許としてはどの程度広い範囲で取得できるのか今後注目すべき案件です。

 

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