すみれブログ
裁判官は辛い?-切り餅事件(1)-
2012年04月9日

先月の22日、注目の切り餅事件について知財高裁で終局判決が出ました。知財高裁は被告であるサトウ食品工業株式会社に対して8億円を越える損害賠償を命じました。

 

すでに中間判決の段階で、被告に対する食品の製造販売の差し止めと製造装置の廃棄を認めた上に仮執行も認めていますので、原告である越後製菓株式会社側の完全勝訴と云えるのではないでしょうか。

 

この訴訟において被告側は中間判決後に代理人をすべて代えると共に、先使用の抗弁,権利濫用の抗弁,公知技術(自由技術)の抗弁に係る主張,及び100を越える書証、証人尋問及び検証の申出をしています。

 

これに対し、裁判所は、いずれも実質的には従来の主張の繰り返しに過ぎないし、被告の重大な過失によって時機に後れて提出された防御方法であり,これにより訴訟の完結を遅延させることとなるものである,として被告の主張及び証拠提出を却下しました。

 

迅速な審理が求められる現在の裁判において、この判断は極めて妥当だと思いますが、判決文には以下のようななお書きが付せられています。

 

なお,当裁判所は,被告代理人らが,控訴審の口頭弁論終結段階になって選任され,限られた時間的制約の中で,精力的に,記録及び事実関係を精査し,新たな観点からの審理,判断を要請した点を理解しないわけではなく,その努力に敬意を表するものである。しかし,特許権侵害訴訟は,ビジネスに関連した経済訴訟であり,迅速な紛争解決が,とりわけ重視されている訴訟類型であること,当裁判所は,原告と被告(解任前の被告訴訟代理人)から,進行についての意見聴取をし,審理方針を伝えた上で進行したことなど,一切の事情を考慮するならば,最終の口頭弁論期日において,新たな審理を開始することは,妥当でないと判断した。

 

被告代理人を労うような詫びるようなニュアンスで、かなり代理人に配慮した内容でしたので調べてみたところ、なんと筆頭代理人は元知財高裁の判事でした。

 

元知財高裁の判事を新しい訴訟代理人として担ぎ出してでも有利な判決を得ようとした被告の執念が感じられます。

 

この程度であれば忌避原因にはならないと思いますが、裁判官もいろんな意味でやりにくかったのではないでしょうか?!

 

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