すみれブログ
並行輸入は違法?(商標権の場合)
2013年09月13日

前回は、特許製品の並行輸入について解説しましたが、登録商標を付した商品の並行輸入についてはどうでしょう。特許製品の場合と同様に考えて良いのでしょうか。

 

前回の例でいれば、ドイツのメーカAは、自社製品の「タイヤホール」について特許のみならず、商標権(例えば商標「BBS」)についても本国(ドイツ)と日本の両方で取得していた場合、ドイツのメーカAは、わが国の商標権を侵害するとしてその商標権に基づいて並行輸入業者Cに対してその輸入・販売を差し止めることはできるでしょうか。

 

結論としては、メーカAは、並行輸入業者Cによる登録商標「BBS」を付した「タイヤホール」のわが国への輸入および販売の差止め請求は認められないでしょう。

 

商標権も特許権と同様に、商標権者からその登録商標を付した商品の正当な譲渡によってその商品に対する商標権の効力が消尽するから、という理由?。

 

ちょっと違います。

 

特許権が保護すべき対象は特許製品そのものであるの対し、商標権が保護する対象はその登録商標ではなく、その登録商標に化体した商標権者の業務上の信用です。

 

つまり、新たな技術的アイデアが盛り込まれた特許製品は、そのもの自体、創作物として価値があり、その創作的価値を保護しようとするのが特許権の役割です。

 

一方、商標は、自他商品を識別するための単なる文字やマークあるいはその組み合わせてあって単なる選択物ですから商標自体には保護すべき創作的価値はありません(…ということになっています)。

 

しかし、ある業者が自己の製品やサービスにその商標を継続して使用すると、その商標に、その商標を付した商品やサービスを提供する事業者の出所を表示する機能や、その商品やサービスの品質を保証する機能が発揮され、その結果、その事業者の業務上の信用がその商標に化体します。

 

ちょっと違うかもしれませんが、例えば1万円札自体は単なる紙切れですが、そのお金を発行している国や国民がその1万円札を1万円分の商品やサービスと交換するのを保証してくれるため、1万円札自体は単なる紙切れでなく、その額面通りの価値を有するものとなるのに似ています(すみません、全然違いますね)。

 

したがって、前記のケースでも並行輸入業者Cによる並行輸入行為がわが国におけるドイツのメーカAの商標権を侵害するか否かについても、この登録商標が発揮する出所表示機能や品質保証機能が害される否かで判断されます。

 

わが国の裁判例では、「真正商品の並行輸入」であれば、登録商標が有する出所表示機能や品質保証機能が害されることはない、としてわが国の商標権を侵害しないとしています。

 

ちなみに、この「真正商品の並行輸入」とは、どういったケースをいうのでしょうか。、

 

裁判例では、以下の3つの条件を全て満たせば、「真正商品の並行輸入」として商標権侵害としての実質的違法性を欠く、つまり、商標権を侵害しないと判断しています。

(1) 当該商標が、外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、
(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、
(3) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合。

 

上記のケースでは、並行輸入業者CはドイツのメーカAから直接、商標が付された製品(タイヤホール)を買い付け、これをそのまま日本に輸入して販売しているため、上記の3つ条件を全て満たした真正商品の並行輸入と認められますので、ドイツのメーカAのわが国での商標権も侵害しないことになります。

 

但し、並行輸入業者Cはそのタイヤホールを勝手に改造して販売したりした場合には、登録商標の品質保証機能を損ねることになりますので、ドイツのメーカAのわが国での商標権を侵害するものとして、その輸入・販売は差し止められることになるでしょう。

 

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