すみれブログ
商標権でAmazonの相乗り防止?(その2)
2017年04月18日

---前回の続きです--

 

Amazonで商品ページを作った出品者はその商品ページへの他人の相乗りを防ぐことは可能でしょうか?

 

これを検討するまえに先ずAmazonに出品されている商品について考える必要があります。Amazonで扱っている商品はブランド品とノーブランド品に分けることができ、これらはその流通ルートなどに大きな違いがあります。

 

まずブランド品というのはAmazon規約では特に定義されていませんが一般的にはその商品の製造者によって商標が付された商品をいい、Amazon規約でもそれとほぼ同義で使用しているようです。

 

つまりその製造者が所有する商標や識別マークが付されることでその品質保証や出所が明確な商品がブランド品ということになります。ちなみにブランド品というとCHANELやLOUIS VUITTON、ROLEXのような高級品をイメージしがちですが、これらはブランド品のなかでも特に世界的に有名な高級ブランドであってここでいうブランド品は必ずしも高級でも有名なものでもある必要はありません。

 

また、小売業者が企画してメーカーに製造を委託した商品(OEM商品)であるプライベートブランドもブランド品という扱いになっています。

 

そうすると日本で製造・販売されている商品の殆どは製造者やその商標(識別マークを含む)が商品又はその包装に明記されていますので日本製の商品はほぼすべてがブランド品といえます。

 

一方、ノーブランド品というのは同じくAmazon規約では特に定義されていませんがブランド品の対義語ですから製造者が不明で商品又はその包装に商標や識別マークが付されていない商品ということになります。中国から輸入される商品の多くはノーブランド商品といわれています。

 

さて、前回説明した「相乗り」ですが、出品する商品がブランド品の場合は実は大きな問題にはなりません。そもそもブランド品を紹介する商品ページはそのブランド品を製造・販売するメーカーあるいはその系列販売店自身が作成するものが殆どであり、その販売自体を独占するメリットはあまりないからです。

 

つまり出品されている商品がニセモノでもない限りその商品の製造元はどの出品者のものでも同じですので、その商品ページの作成者は仮に自分が出品した商品が売れなくとも、他の出品者の商品が売れれば結局は自分の商品が売れたのと同じ結果となるので損することはありません。むしろたくさんの販売業者が取り扱ってくれれば売り上げに貢献しますので相乗りは歓迎なのです。

 

これに対しノーブランド品の出品者の場合はそうはいきません。ノーブランド品の多くは中国製品ですがその出品者はメーカーではないのでその商品をどこかから仕入れてくる必要があります。出品者によっていろいろな仕入ルートがあるようですがその多くはタオバオやアリババのような中国最大のネットショッピングモールです。

 

彼らはまだAmazonで売られていない商品で日本で売れそうな商品を見つけ出し、これを個人輸入してAmazonで転売することを生業としているのです。つまりノーブランド品の出品者の多くは中国製品の輸入転売業者なのです。ちなみに国籍は日本はもちろん中国や韓国等と様々です。

 

タオバオやアリババのような中国のネットショッピングモールではオリジナル商品からコピー商品までありとあらゆるモノが売られています。製造元や商標が付されていないオリジナル商品の場合は単にノーブランド品として日本国内で販売できますが、前回のブログでも紹介したようにノーブランド品のなかには日本の知的財産権を侵害するコピー商品も含まれることがあり、そうと知らずに個人輸入して出品するとAmazonから出品停止という処分を受けるケースもあります。

 

出品当初は誰もそのノーブランド商品を販売していなかったので最初にその商品ページを作成した出品者は儲けを独り占めできたのですが、やがて他の転売業者も同じ商品を扱うようになって相乗りが起こります。そしてこのような転売目的で作ったノーブランド品の商品ページに相乗りが起こると前述したような問題(価格競争、ページ乗っ取り、評価の低下)が発生するのです。

 

そこで誰が最初に考えたのかは不明ですがこのような相乗り現象を防止するために彼らはそのノーブランド品をプライベートブランド化するためにその商品に商標を付し、その商標について日本で商標権を取得するのです。

 

商標権を取得してプライベートブランド化すれば相乗り商品はその商標権を侵害する商品であるからAmazon規約に反し、出品停止をAmazonに要請できるというのです。実際Amazonもこのような申告があれば商標権侵害とみなして相乗り商品の出品を直ちに停止する対応を行っているようです。

 

???…ここで1つ疑問が湧きます。

 

素人であればこのロジックに何の疑問も持たないでしょうが我々のような知的財産権の専門家からしてみれば、なぜこの相乗り業者が出品する商品が商標権の侵害になるのかということです。実は私も当初これがどうしても腑に落ちなかったのです。

 

商標法上の商標権侵害とは権原なき第三者が登録商標またはそれに類似する商標を指定商品(役務)またはそれに類似する指定商品(役務)に使用する行為及びその予備的行為をいいます(第25条、第37条)。そして商標の使用とは商品やその包装に標章を付したり付したものを譲渡したり展示広告したりする行為をいいます(第2条)。

 

つまり少なくとも商標権の侵害というためには商品やその包装に商標を付す行為が必要となるわけですが、相乗り業者は自分の商品には商標権者の商標を一切付さないで出品しているのです。

 

相乗り業者はノーブランド品を何の手も加えずにそのまま出品しているだけですので商標法上に規定する侵害行為には一切当たらない筈なのになぜAmazonはこれを商標権侵害として扱っているのでしょうか??

 

実はその後Amazon規約を隅々まで確認したのですがAmazonはこのような行為を商標権侵害とは一言も規定していないのです。どうやら思うにここでいう商標権侵害とは中国製品の輸入転売業者の間でのみ通用している定義のようで商標法上の定義とは全く異なるものであるということに注意しなければなりません。

 

Amazonとしては元々はノーブランド品であっても商標権を取得してプライベートブランド化すれば他のノーブランド品とは異なる商品として取り扱うこととし、他人がその商品ページにノーブランド品を出品して相乗りすることは商品ページで紹介する商品と異なる商品を販売することとなってAmazon規約に違反するからその商品ページへの出品を停止する(相乗り禁止)というロジックで処理しているようなのです。

 

なぜAmazonはこのようなややこしいことをしているのでしょうか?これは推測ですがAmazonが取り扱う商品のなかにはかなりの数のノーブランド品が含まれているからだと思うのです。もし一律にノーブランド品の取り扱いを禁止するとそれを出品する転売業者はもちろんそれを購入する消費者の数が大幅に減って収益が減少する、かといってすべての相乗りを放置したままでは同じく転売業者が儲からなくなってAmazonから撤退し、同じ結果を招くということをAmazonは恐れているのだと思うのです。

 

そこで折衷案として真面目(?)な転売業者に対しては元々はノーブランド品であっても商標権を取得してプライベートブランド化すれば相乗りを防止してあげますよ、ということでそれらの転売業者を保護しているのだと思うのです。ただし単に商標権を取得しただけでは商品の区別が付きませんのでAmazonとしては以下のようなハードル(規約)を設定し、これを遵守する転売業者だけを保護するようにしているのです。

 

-----------------------------------------9.7. プライベートブランド品の出品について 自社で製造していないノーブランド品に対し、何らかのオリジナル性を加え独自のプライベートブランド品として出品する際は、以下の事項を遵守くださいますようお願いいたします。

1)ブランド名またはブランドロゴを、商品本体または商品のパッケージに印字または刻印する。

2)1)が明確に確認できる画像を登録する。

3)商品名にブランド名を記載する。

4)ブランド名欄に該当ブランド名を登録する。

※ 衣類商材の場合は以下を遵守してください。

ブランド名が記載されたラベルを商品に縫い付ける。または、ブランド名が記載されたタグを糸・チェーン・タグピンなどで付ける。上記の条件を満たしていない商品はすべて【ノーブランド品】としての出品となりますので、ご注意ください。

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ちなみにこの規約を読む限りでは必ずしも商標権の取得が義務とはなっていないのですが、実務的には相乗り排除の申告に際してその根拠となる権利の主張が必要になりますので実質的には商標権の取得が不可欠なようです。

 

で、既に結論を言ってしまっているのですが、商品ページを作った出品者は取り敢えずそのノーブランド品について商標権を取得してチョット手を加えればその商品ページへの相乗りを防止できますよ、ということです。

 

しかし商標権にもこんな使い方があったとは…。

 

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