すみれブログ
井村屋のあずきバー
2013年01月26日

井村屋の棒アイス「あずきバー」の商標登録を認めなかったのは不当だとして、井村屋グループ(津市)が特許庁の審決取り消しを求めた訴訟の判決が24日、知財高裁でありました。知財高裁は「『あずきバー』は井村屋の商品として広く認識されている」として井村屋側の請求を認める判決を言い渡しました。

 

今後、事件は特許庁に差し戻されますが、実質的にはこれで商標『あずきバー』(商願2010-52888)は井村屋グループのものとして商標登録されることでしょう。

 

さて、自社で使用する商標を登録商標として認めてもらうためには、まず特許庁に対して商標登録出願をする必要があります。

 

出願を受理した特許庁(の審査官)はその商標を登録商標として認めるかどうかの審査を行うわけですが、この審査は申請のあった商標が法定の条件をすべてクリアしているか否かによって行われます。そして、法定の条件をすべてをクリアしていれば、商標登録として認め、反対に1つでもクリアできなければ登録を拒絶します(拒絶査定)。

 

この法定の条件の1つとして、「その商標が商標として自他商品識別力を有すること」というものがあり、特許庁はこの条件を満たしていないので井村屋の出願商標『あずきバー』を登録商標として認めなかったのです。

 

つまり、特許庁は出願商標『あずきバー』は、その商品の品質や形態をそのまま表したのに過ぎず、このような誰でも使用する可能性がある商標(名称)を一個人に独占使用することは認められないというものです。

 

特許庁の拒絶査定に不服がある出願人は審判(拒絶査定不服審判)を請求することが可能ですので、出願人である井村屋側もこの拒絶査定が不服であるとして審判を請求したのですが、残念ながらこの審判でも登録は認めれませんでした。

 

そして、この特許庁(行政機関)の処分に不服のある者は裁判所にその処分の取り消しを求めて提訴することが可能ですので、井村屋側もこの拒絶査定不服審判の審決は不当であるとして知財高裁にその取消を求めたところ(審決取消訴訟)、その主張が認められたというのがこのニュースです。

 

知財高裁は、井村屋の出願商標『あずきバー』は、長年の使用により既に識別力を発揮しているから特許庁が認めなかった法定の条件は既にクリアしていると判断したのです。

 

つまり、商標法には「その商品の品質や形態などをそのまま表したのに過ぎない商標であっても長年の使用により識別力を発揮することがあり、この場合は商標登録を認める」という規定があります(商標法第3条2項)。

 

井村屋の「あずきバー」は小豆入りの棒状アイスで1972年に発売された同社の主力商品です。年間販売本数が2億5800万本という人気商品です。そして、裁判所はこの井村屋の出願商標『あずきバー』は、長年の使用により井村屋の小豆入り菓子として既に識別力を発揮しているからこの規定の適用を認めたのです。

 

このような長年の使用により識別力が認められて商標登録されたものの1つに缶コーヒーなどに使われている「GEORGIA」(登録2055752号)、「ジョ-ジア」(登録2055753号)などがあります。

 

ちなみに、今回の事件の対象となる出願商標は標準文字で表された文字商標であり、我々が店頭でよく目にするパッケージ商標は以下のようにすでに登録になっています。

4896333.jpg 登録第4896333号

4896332.jpg 登録第4896332号

5503451.jpg 登録第5503451号

なお、以下のように「あずきバー」なる文字を一部に含む他社の商標も登録になっています。

4907782.jpg 登録第4907782号

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