すみれブログ
並行輸入は違法?
2013年08月27日

最近、ブログタイトルとは全く関係ない話題ばかりを書いていたので今回は真面目なテーマで書きたいと思います。

 

あるドイツのメーカーAが独自に開発した製品(例えば、タイヤのホイール)について本国(ドイツ)と日本のそれぞれについて特許を取得していました。

 

本国(ドイツ)では、そのメーカーA独自のルートでその特許製品を販売し、日本には、代理店Bを通して輸出し、日本国内ではその代理店Bがその特許製品を独占販売しています。

 

諸般の事情により、その特許製品はドイツ国内では10万円(円に換算した場合)で販売されていますが、日本国内では15万円で販売されています。

 

この価格差に目を付けたある輸入業者Cは、ドイツ国内でその特許製品をメーカーAから直接10万円で買い付け、そのまま独自のルートで日本に輸入して、日本国内で14万円で販売しています。いわゆる並行輸入です。

 

このため、代理店Bで販売される特許製品の売り上げが落ちています。

 

そこで、わが国の特許権者であるドイツのメーカーAは、わが国の特許権に基づいてその業者の輸入・販売行為を差し止める訴訟を起こしました。

 

(1)この場合、ドイツのメーカーAの差し止め請求は認められるでしょうか。

 

(2)また、ドイツのメーカーAが本国では特許を有しておらず、わが国だけで特許を取得している場合はどうでしょうか。

 

なんやら弁理士試験の論文式筆記試験の問題のようですが、実際にわが国で争われた事例です。

 

結論から言うと、東京地裁はドイツのメーカーAに軍配を上げ、控訴審である東京高裁は並行輸入業者Cに軍配を上げました。そして、上告審である最高裁もこの東京高裁の判断を支持し、条件付きで並行輸入業者Cに軍配を上げました。

 

つまり、並行輸入は原則としてわが国の特許権を侵害するものではないとの判断をしたのです。

 

その理由はこうです。

 

特許権者から特許製品を購入するなどして正当に手に入れた場合、その特許製品に関する特許権の効力はその譲渡により消尽(消滅)します。そのため、その特許製品をドイツ国内でメーカーA(特許権者)から購入した並行輸入業者Cは、その特許製品を転売しようが他人にレンタルしようが、その後の行為について特許権者から文句を言われる筋合いはありません。

 

確かにこれらの行為がドイツ国内だけで行われているのであればその通りですが、これを日本に輸入して販売した場合、日本の特許権の効力は消尽していないため、日本国内におけるその特許製品の輸入・販売行為は、日本の特許権を侵害すると考えることができます。

 

つまり、特許権は各国毎に独立して成立し、その効力や消長も各国毎に独立して判断されるため、ドイツの特許権の効力が消尽したとしても日本の特許権の効力は消尽していないので、ドイツで特許権の効力が消尽した並行輸入品を日本国内で販売する場合には、日本国の特許権を侵害するという考え方です。

 

これが裁判の最大の争点になったのですが、最高裁は、二重利得や国際取引の実情などを考慮して並行輸入を認める判断をしたのです。

 

ただし、そうなるとわざわざ日本でも特許を取得したドイツのメーカーAは、ちょっと気の毒です。また、場合によっては国際問題にも発展しかねません。

 

そのため、最高裁は、本国(ドイツ)での譲渡(販売)の際に、その特許製品を日本に輸入しないなどの条件付きで輸入業者Cなどに特許製品を販売した場合や、その旨を特許製品に明記した場合には、輸入業者Cらがその特許製品を日本に並行輸入する行為に対しては輸入業者Cらに対してわが国の特許権を行使できるとして、ドイツのメーカーAに対しても一定の配慮をしたのです。

 

従って、(2)のケースについては、当然に並行輸入業者Cの行為は違法となります。

 

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